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第465条の4(個人根保証契約の元本の確定事由)


【改正法】
(個人根保証契約の元本の確定事由)
第465条の4 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。ただし、第1号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
一 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
二 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

2(新設) 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第1号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
一 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
二 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
【旧法】
(貸金等根保証契約の元本の確定事由)
第465条の4 次に掲げる場合には、貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。
一 債権者が、主たる債務者又は保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。ただし、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
主たる債務者又は保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、個人根保証契約の元本の確定事由を定めた規定ですが、旧法の規定を元に元本確定事由を増やしています。

そもそも、元本確定事由は、個人が保証人になる根保証契約について、この元本確定事由があれば、その後に発生する主たる債務は保証の対象外となるという意味があります。

個人根保証契約には、極度額を定める必要がありますが、この極度額自体には上限というのは設けられていませんので、入り口段階での内容の規制はされていません。そこで、元本確定期日を定める場合には5年以内、定めない場合には3年とするという規制が加えられています(465条の3)。

しかし、このような元本確定期日の制限があるとしても、これら5年、3年の間に契約締結時には予測できなかった事態が生じる可能性があります。そこで、保証人は、法定又は合意による元本確定期日の到来前でも、①主債務者と保証人との関係、②債権者と主債務者との関係(取引態様)、③主債務者の資産状態のいずれかに著しい事情の変更があった場合等、一定の特別な事由がある場合には、保証すべき債権の元本の確定を請求することができると解されていました。債務者の方が頻繁に債務不履行を繰り返しているような場合には、債務者との関係で保証契約を維持する前提となる信頼が失われたという理由で元本の確定請求を認めた裁判例もあります。

平成16年の民法改正では、このような事情変更の徴表と見られる定型的な幾つかの事由については、法律上当然の元本確定事由として明文化されました(旧法465条の4)。

しかし、今回このような定型的な事由を超えて一般的に保証人からの特別の元本確定請求権(いわゆる特別解約権)を明文化するかどうかが検討されました。

ただ、この明文化については、旧法の下でも信義則等の一般条項により救済が図られており、この特別解約権を規定しなくても現在よりも保証人の保護が後退することにはならないと考えられます。また、法律上に明文規定を設けるとしても、考慮すべき様々な要素を的確に表現することが極めて困難であり、裁判規範としてあまりにも不明確なものとなるおそれがあるという問題が指摘されていました。

そこで、旧法の元本確定事由にいくつかの項目を追加するという法改正になりました。ただ、この元本確定事由の追加もちょっとクセ者ですので注意して下さい。

まず、旧法は「貸金等根保証契約」となっています。そして、改正法では、第1項は「個人根保証契約」、第2項は「個人貸金等根保証契約」だという点を注意して下さい。ちょっと話がややこしいかもしれませんので、下記の図を見ながら読んで下さい。

第465条の4(個人根保証契約の元本の確定事由)

旧法は、「貸金等」根保証契約となっていますので、貸金等以外の根保証契約には適用がありません。そして、貸金等の場合であれば、主たる債務者・保証人の財産に対する強制執行等、主たる債務者・保証人の破産、主たる債務者・保証人の死亡の場合には元本の確定事由になります。

そして、改正法第1項は「個人根保証契約」となっていますので、貸金等だけでなく、それ以外の主たる債務についての根保証契約にも適用されます。そして、第1号では保証人の財産に対する強制執行等、第2号では保証人の破産、第3号では主たる債務者・保証人の死亡が元本確定事由とされています。

次に改正法第2項は、個人「貸金等」根保証契約となっていますので、貸金等以外の主たる債務の根保証契約には適用がありません。そして、主たる債務が貸金等であれば、第1号では主たる債務者の財産に対する強制執行等、第2号では主たる債務者の破産手続開始が元本確定事由となります。

ややこしい規定ですが、まとめると、旧法で元本確定事由とされていたものは、改正法でもすべて元本確定事由とされています。

そして、改正法では、主たる債務が貸金等以外の個人根保証契約について、保証人の財産に対する強制執行等、保証人の破産、主たる債務者・保証人の死亡が新たに元本確定事由として追加されているわけです。ただ、追加しているとしても、主たる債務が貸金等以外の場合(たとえば、賃借人の債務の根保証)は、主たる債務者の財産に対する強制執行等、主たる債務者の破産手続開始については元本確定事由としていません。この点では旧法の規定と同じです。