第424条の7(被告及び訴訟告知)
【改正法】(新設) (被告及び訴訟告知) 第424条の7 詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を被告とする。 一 受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え 受益者 二 転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え その詐害行為取消請求の相手方である転得者 2 債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。 |
【旧法】 なし |
※上記赤字の部分が改正部分です。
【解説】
本条は、詐害行為取消訴訟における被告及び債務者に対する訴訟告知に関する規定です。
判例(折衷説)によれば、詐害行為取消訴訟の被告は受益者又は転得者とされ、取消しの効果は、取消債権者と受益者・転得者との間で相対的に生じ、債務者には及ばないとされています。そして、逸出した財産は債務者の元に返還され、債務者の下で強制執行が行われることになります。
しかし、取消しの効果が債務者には及ばないにもかかわらず、債務者の元に返還された逸出財産に対して強制執行できるのは理論的に説明できないとされます。また、判決の効力が債務者に及ばないのであれば、受益者が債務者に財産を返還しても、すでに受益者が支払っていた金銭等の返還を債務者に対して請求できなくなり、関係者間の統一的な利害を調整することが困難になります。
そこで、改正法は詐害行為取消訴訟の被告は、従来の判例通り、受益者・転得者としつつも(第1項)、取消債権者に対して、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならないとして(第2項)、債務者に訴訟に参加する機会を保障しました。そして、詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者に対してもその効力を有するとしています(425条)。
このように判決の効力が債務者に及べば、債務者が受益者に対して、詐害行為によって移転した財産の返還や不当利得の返還を求めることができ、受益者は債務者に財産の返還等をすれば、債権者の受益者に対する債務者への返還請求の権利は消滅することになります。
なお、受益者から財産を受け取った債務者が、さらに詐害的な行為をするおそれがある場合は、債権者は、債務者の受益者に対する財産の引渡請求権について仮差押えをするなどの手段をとることが可能です。