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第149条(仮差押え等による時効の完成猶予)


【改正法】
(仮差押え等による時効の完成猶予)
第149条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
一 仮差押え
二 仮処分
【旧法】
(時効の中断事由)
第147条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一 請求
二 差押え、仮差押え又は仮処分
三 承認

(差押え、仮差押え及び仮処分
第154条 差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない。

第155条 差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条の仮差押え・仮処分は、旧法において時効の「中断」事由とされていました。

ところが、改正法は、従来の時効の中断事由を、時効の「完成猶予」と時効の「更新」に分けて整理しています(第147条の解説参照)。

そこで、改正法は、仮差押えと仮処分は、その事由が終了した時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない、として時効の完成猶予の効力のみ有すると規定しました。

ということは、「更新」の効力はないということですが、そもそも仮差押えや仮処分は、手続の開始に当たって債務名義を取得している必要はなく、権利関係は、その後の裁判によって確定されることが予定されています。したがって、仮差押えや仮処分は、それまでの債務者の財産等を保全するための暫定的なものにすぎないことになります。ということで、時効の更新の効力はありません。ただ、仮差押えや仮処分に続いて、本案訴訟が提起された場合には、裁判上の請求に該当することになるので、確定判決等によって権利関係が確定すれば、時効の更新の効力が生じます。