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旧第105条(復代理人を選任した代理人の責任)


【改正法】
削除
【旧法】
(復代理人を選任した代理人の責任)
第105条 代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。

2 代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、旧法では「復代理人を選任した代理人の責任」の規定が丸ごと削除されています。

これは、当たり前ですが、復代理人を選任した代理人の責任がなくなる、という意味ではありません(笑)。復代理人を選任した代理人の責任については、旧法105条のような特別な扱いはなくなり、通常の規律に服するという意味です。

詳しく説明しますと、復代理人が行った行為について、代理人がどのような責任を負うかについては、法定代理の場合には、原則として「全責任」を負わされます(改正法105条)。

しかし、任意代理の場合は、特に規定はなく、法定代理の場合のように「全責任」を負わされるということはありません。それでは、どの程度の責任を負わされるのかという点についてですが、任意代理においては、本人と任意代理人との間には委任契約が締結されているはずです。

したがって、任意代理人としては、この委任契約等に基づいて必要な事務処理を行ったかどうかという点について責任を負わされるということになります。また、これについて当事者間に何らかの合意があれば、その合意内容によります。そして、受任者(ここでは代理人のこと)には、この事務処理について「しっかり注意して仕事をしなさい」(「善管注意義務」といいます。)という義務が課されています。

そして、この委任契約等に基づく責任は、旧法の「選任・監督の責任」、及び代理人が、本人の指名に従って復代理人を選任したときの「復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときの責任」よりは重い責任になります。つまり、旧法の「復代理人を選任した代理人の責任」というのは、普通ならば代理人が善管注意義務を負わされるところを、特に代理人の責任を軽減していたことになります。

しかし、任意代理人が復代理以外の方法で第三者を用いた場合には、責任が軽減されないのに、復代理という形で第三者を用いた場合には責任が軽減されるというのは均衡を失することになります。

以上より、結論として、旧法105条を削除し、代理人は選任・監督等の責任に限らず、代理人として委任契約等の責任に反するかどうかで、代理人の責任が判断されることになります。