下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成27年 問16

【動画解説】法律 辻説法

【問 16】 都市計画法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 第二種住居地域における地区計画については、一定の条件に該当する場合、開発整備促進区を都市計画に定めることができる。

2 準都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、区域区分を定めることができる。

3 工業専用地域は、工業の利便を増進するため定める地域であり、風致地区に隣接してはならない。

4 市町村が定めた都市計画が、都道府県が定めた都市計画と抵触するときは、その限りにおいて、市町村が定めた都市計画が優先する。

【解答及び解説】

【問 16】 正解 1

1 正しい。第二種住居地域、準住居地域若しくは工業地域が定められている土地の区域又は用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)における地区計画については、開発整備促進区を都市計画に定めることができる。

【じっくり解説】

開発整備促進区の出題は平成25年に続いて2回目の出題になります。平成25年→27年と比較的間をおかずに出題されているので、この問題は少し気にした方がいいかもしれません。

そもそも開発整備促進区の定義は、都市計画法12条の5第4項に規定があり、「(一定の)条件に該当する土地の区域における地区計画については、劇場、店舗、飲食店その他これらに類する用途に供する大規模な建築物(以下「特定大規模建築物」という。)の整備による商業その他の業務の利便の増進を図るため、一体的かつ総合的な市街地の開発整備を実施すべき区域」ということになります。
平成25年の問題は、この条文そのままの内容で「正しい」肢として出題されていました。
【参考問題】平成25年問15肢4
そして、それを一歩進める形で、本問は出題されています。本問の「第二種住居地域」という具体的な用途地域を挙げて、開発整備促進区の要件を問うているわけです。

それでは、そもそも開発整備促進区というのは、どういうものかということですが、これは地区計画の一種です。

そして、「劇場、店舗、飲食店その他これらに類する用途に供する大規模な建築物(特定大規模建築物といいます。)」を建築するときに定められる都市計画です。このように、開発整備促進区においては、建築する建物が劇場、店舗、飲食店等に限定されています。
たとえば、工業地域にある工場跡地を活用して、大規模なショッピングモールを建設する計画があるとします。このときに、その地域を工業地域から商業地域に用途地域を変更するというのは大変です。しかし、工場跡地の有効活用はしたいわけです。そこで、工業地域のままでもショッピングモールを建築できるようにしようというのが、この開発整備促進区です。

ただ、いきなり工業地域にショッピングモールのような商業施設を建てることができるとすれば、用途地域というのを定めて建物の用途を配分した意味がなくなってしまいます。
そこで、工業地域に商業施設を建ててもいいけど、商業施設というものが不特定かつ著しく多数の人々を集めるものですから、商業施設を建てるにあたって道路等を整備して、その点を配慮した計画を立てるのであれば、商業施設の建築も認めましょう、というのが開発整備促進区です。

そして、この開発整備促進区を定めるにあたっては用途地域の制限があります。それが都市計画法12条の5第4項の第1号~第4号に規定されていますが、重要なのは第4号で開発整備促進区を定めることができる用途地域を規定しています。
具体的には、「第二種住居地域、準住居地域若しくは工業地域が定められている土地の区域又は用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)であること」というのがそれです。
それではなぜこのような用途地域の制限があるのでしょうか。
用途地域はご存じのように13種類あります。

このうち第一種低層住居専用地域~第二種中高層住居専用地域までの「住居専用」地域に商業施設を建てられるようにするのは無理だということは分かると思います。そして、第一種住居地域も大規模な集客施設を建築することは不適当です。

そして、商業系の用途地域(近隣商業地域と商業地域)は、もともと商業施設を建てることができるので、わざわざ開発整備促進区を定める必要はないでしょう。同様に、準工業地域も、もともと建築基準法の用途規制が緩いので、大規模な集客施設も建築することができますので、開発整備促進区を定める必要がありません。

次に、工業専用地域にも商業施設を建てるのは不適当です。

そこで、残った第二種住居地域、準住居地域、工業地域について開発整備促進区を定めることができるようにしました。もともと、これらの地域は建築基準法の用途制限で、大規模な集客施設の立地が原則として制限される地域なので、道路等の公共施設を整備するならば、この用途制限を緩和して商業施設を建築できるようにしたということです。

なお、市街化調整区域を除く用途地域未指定の区域も開発整備促進区を定めることができます。たとえば、これは用途地域の指定のない区域において、インターチェンジと都市を結ぶ幹線道路の利便を活用して大規模店舗を建設するような例が考えられます。

ということで、ここまでの解説で本問は十分に解けます。第二種住居地域で、開発整備促進区を定めることができるので、「正しい」ということになります。

*都市計画法12条の5第4項4号

2 誤り。準都市計画区域については、用途地域等の一定の「地域地区」については定めることができるが、区域区分を定めることはできない。

【じっくり解説】

この問題については、都市計画法8条2項にズバリ規定があります。「準都市計画区域については、都市計画に、前項第1号から第2号の2まで、第3号(高度地区に係る部分に限る。)、第6号、第7号、第12号(都市緑地法第5条の規定による緑地保全地域に係る部分に限る。)又は第15号に掲げる地域又は地区を定めることができる。」というもので、準都市計画区域について、どんな都市計画を定めることができるのかがズバリ規定されていますが、条文の引用だらけで、これだけではみなさんも分からないでしょう。

この条文を具体的に書きますと、準都市計画区域では以下の都市計画を定めることができるということになります。逆に言うと、これ以外を定めることはできません。

  1. 用途地域
  2. 特別用途地区
  3. 特定用途制限地域
  4. 高度地区
  5. 景観地区
  6. 風致地区
  7. 都市緑地法による緑地保全地域
  8. 文化財保護法による伝統的建造物群保存地区

普通の勉強方法でいうと、この8つを覚えて下さい、ということになるかと思いますが、なかなか丸暗記というのも難しいですし、試験では他に覚えることも多いので大変です。
そこで、ポイントを押さえて、覚えやすくしたいところです。
まず、先ほどの都市計画法8条というのは、「地域地区」に関する条文です。したがって、準都市計画区域で定めることができる都市計画は、地域地区に限定されているというのを覚えて下さい。

したがって、地域地区以外の都市計画である
区域区分 →本問
市街地開発事業 →平成26年 問15 肢3
は除かれるということになります。

上記2つは内容的に考えても、準都市計画区域というのは、都市計画区域外における開発行為及び建築行為の増加に対して、積極的な開発は行わず、土地利用の整序又は環境の保全を行うことを目的としています。したがって、準都市計画区域では、事業に関する都市計画は行われません。
だから、準都市計画区域では、市街地開発事業のような市街地を開発するような事業を行うことはできません。
また、区域区分を行い市街化区域と市街化調整区域を区分しますと、市街化区域という開発を行う区域を作ることになるので、これも準都市計画区域で定めることはできません。

以上で、本問に対する解答が分かるでしょう。「誤り」です。

以上で本問は解決ですが、関連過去問も紹介しておきましょう。「準都市計画区域については、都市計画に、高度地区を定めることはできるが、高度利用地区を定めることはできないものとされている。」という問題です。
【参考問題】平成23年 問16 肢2

これも単純に、準都市計画区域で定めることができる上記8つの中に、高度地区はあるが、高度利用地区はないということです。
内容的にも、高度利用地区は、土地の高度利用(有効利用)を図る地区です。したがって、準都市計画区域で、「土地の高度利用をしろ!」というのはおかしな話なので、納得できると思います。

*都市計画法8条2項

3 誤り。工業専用地域は、工業の利便を増進するため定める地域であるという点は正しいが、風致地区に隣接してはならないというような制限はない。
*都市計画法9条12項

4 誤り。市町村が定めた都市計画が、都道府県が定めた都市計画と抵触するときは、その限りにおいて、「都道府県」が定めた都市計画が優先するものとする。
*都市計画法15条4項


【解法のポイント】正解肢の肢1の開発整備促進区は、かつて一度出題されたことがありますが、開発整備促進区を定めることができる条件については、初出題で分からなかったと思います。肢2の準都市計画区域で定めることができるものと迷った人も多かったのではないかと思います。