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第665条の2(混合寄託)


【改正法】(新設)
(混合寄託)
第665条の2 複数の者が寄託した物の種類及び品質が同一である場合には、受寄者は、各寄託者の承諾を得たときに限り、これらを混合して保管することができる。

2 前項の規定に基づき受寄者が複数の寄託者からの寄託物を混合して保管したときは、寄託者は、その寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができる。

3 前項に規定する場合において、寄託物の一部が滅失したときは、寄託者は、混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
【旧法】
なし

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

1.定義等

混合寄託契約というのは、旧法には規定がありませんでしたので、新設の規定ということになります。

まず、第1項で混合寄託契約(混蔵(こんぞう)寄託とも呼ばれます)の定義があります。「複数の者が寄託した物の種類及び品質が同一である場合には、受寄者が、これらを混合して保管すること」ということになります。

この混合寄託は、株券のような有価証券、金、石油、穀物などで利用されています。「複数の者が寄託した物の種類及び品質が同一である場合」ということですから、たとえば、証券会社が顧客から株券の寄託を受けたときに、株主ごとに分別して保管するのではなく、他の顧客から預かった同一銘柄の株券と混同して保管します。そして、顧客に対して株券を返還するにあたっては、同じ数量の株券を混合物から返還することになります(第2項)。

これは、次条の消費寄託とは異なります。消費寄託というのは、寄託物は一旦受寄者に所有権が移ります。しかし、混合寄託では、寄託物の所有権は、受寄者である証券会社には移らず、証券会社の株券と顧客の株券は分別されます。しかし、顧客同士の同一銘柄の株券は混合して保管されるわけです。

なぜ、このような寄託の形態が取られるかというと、寄託者同士の寄託物をまとめて保管することにより、保管の場所や労力の負担を軽減することにより、保管のコストを下げることができるからです。

このように、民法には規定がなくても、現実にはこの混合寄託というのは利用されていたわけですが、民法に規定を定めて、そのルールを明確化しようということで改正法に取り入れられています。

2.要件

この混合寄託契約が成立するには、「各寄託者の承諾」というのが必要になります。要するに、「勝手に寄託者同士の財産を混ぜて保管するな」ということです。

3.寄託物の一部滅失(第3項)

寄託物の一部が滅失した場合、寄託者同士の寄託物は混合して保管されているわけですから、滅失した寄託物は、どの寄託者のものと特定することはできませんので、このような場合にどうするのか、というのが問題になります。

その場合は、寄託者は、総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還請求ができるにすぎないと規定しています。残った寄託物について自分の割合分だけ返還されるということです。もちろん、その場合には、受寄者に対して損害賠償請求をすることができます。