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第660条(受寄者の通知義務等)


【改正法】
(受寄者の通知義務等)
第660条 寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。ただし、寄託者が既にこれを知っているときは、この限りでない。

2(新設) 第三者が寄託物について権利を主張する場合であっても、受寄者は、寄託者の指図がない限り、寄託者に対しその寄託物を返還しなければならない。ただし、受寄者が前項の通知をした場合又は同項ただし書の規定によりその通知を要しない場合において、その寄託物をその第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。)があったときであって、その第三者にその寄託物を引き渡したときは、この限りでない。

3(新設) 受寄者は、前項の規定により寄託者に対して寄託物を返還しなければならない場合には、寄託者にその寄託物を引き渡したことによって第三者に損害が生じたときであっても、その賠償の責任を負わない。
【旧法】
(受寄者の通知義務)
第660条 寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、旧法の「受寄者の通知義務」の規定の続きを追加したような改正です。旧法では、寄託物について権利を主張する第三者が現れて、受寄者に対して訴えの提起等をした場合に、それを寄託者に通知する義務を規定しています。しかし、その通知までしか規定されていないので、その後寄託物を返還するとなったときに、どうすればいいのか、誰に返還しなければならないのかについて規定がありませんでしたので、その後の対応を追加しています。

まず、旧法にも規定があるように、寄託物について権利を主張する第三者が現れて、受寄者に対して訴えの提起等をした場合に、それを寄託者に通知する必要があります。そして、第1項に但書が追加されて、寄託者がそれを知っているときには、通知は不要としています。これは当然の話だと思います。

そして、第2項、第3項が新設された規定になります。

第三者が寄託物について権利を主張する場合、受寄者が寄託物を返還するのは、寄託者になります。ただし、寄託物をその第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決があり、第三者にその寄託物を引き渡したときは、寄託者への返還は不要となります(第2項)。

そして、寄託者に寄託物を引き渡したことによって第三者に損害が生じたとしても、受寄者は損害賠償の責任を負わず免責されます(第3項)。