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第642条(注文者についての破産手続の開始による解除)


【改正法】
(注文者についての破産手続の開始による解除)
第642条 注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。ただし、請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。

2(新設) 前項に規定する場合において、請負人は、既にした仕事の報酬及びその中に含まれていない費用について、破産財団の配当に加入することができる。

3 第1項
の場合には、契約の解除によって生じた損害の賠償は、破産管財人が契約の解除をした場合における請負人に限り、請求することができる。この場合において、請負人は、その損害賠償について、破産財団の配当に加入する。
【旧法】
(注文者についての破産手続の開始による解除)
第642条 注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。この場合において、請負人は、既にした仕事の報酬及びその中に含まれていない費用について、破産財団の配当に加入することができる。

(新設)

2 前項の場合には、契約の解除によって生じた損害の賠償は、破産管財人が契約の解除をした場合における請負人に限り、請求することができる。この場合において、請負人は、その損害賠償について、破産財団の配当に加入する。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、注文者について破産手続開始の決定があったときの、請負人又は破産管財人の解除についての規定です。改正法では、第1項で但書を追加した上で、旧法で第1項後段にあった部分を、改正法では内容はそのままで、第2項に持ってきています。したがって、改正の内容としては、第1項但書の追加のみということになります。

そこで、旧法の第1項を見てみますと、前段で、注文者が破産手続開始の決定を受けたときに、「請負人」又は「破産管財人」の契約の解除権を認めています(この部分に改正はありません)。破産法53条1項によると、双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、「破産管財人」は、契約の解除をすることができる旨を規定していますが、相手方(本条でいうと請負人)に解除権は認めていません。しかし、本条では請負人にも解除権を認めているのが特徴ということになります。

これは、注文者が破産手続開始の決定を受けている場合には、報酬の支払いがなされる保証はありません。それにもかかわらず、請負人に仕事を継続し完成させることを要求するのは酷であるからです。

したがって、仕事が完成しているのであれば、請負人はこれ以上の仕事をする必要はないので、先ほどの趣旨は当てはまらないので、改正法の第1項但書で、仕事の完成後については、請負人による契約の解除権を否定しました。