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第621条(賃借人の原状回復義務)


【改正法】
(賃借人の原状回復義務)
第621条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
【旧法】
(使用貸借の規定の準用)
第616条 第594条第1項、第597条第1項及び第598条(借主による収去)の規定は、賃貸借について準用する。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

賃貸借契約が終了すれば、賃貸の目的物の返還義務が生じますが、旧法では、使用貸借に関する「借用物を原状に復して,これに附属させた物を収去することができる」という規定(第598条)を賃貸借に準用していますが、原状回復の内容・程度については定められておらず、賃貸借終了時の賃借物の返還の際に紛争が多発していました。

もちろん、その点について判例が集積していましたが、民法の中に原状回復の範囲等について規定を置くべきだということで、改正法に規定が設けられました。

具体的には、賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷について原状に復する義務を負うことになりますが、この損傷については「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗(通常損耗)並びに賃借物の経年変化」は除かれます。つまり、通常損耗・経年変化については原状回復しなくてよいわけです。

ただ、この「通常損耗・経年変化」に該当するかどうかは非常に微妙です。次に、法務省のホームページが挙げている、この通常損耗や経年変化に該当するもの、該当しないものを指摘しておきます。

■通常損耗・経年変化に該当する例
・家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
・テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
・地震で破損したガラス
・鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)

■通常損耗・経年変化に該当しない例
・引っ越し作業で生じたひっかきキズ
・タバコのヤニ・臭い
・飼育ペットによる柱等のキズ・臭い
・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備等の毀損