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第611条(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)


【改正法】
(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
第611条 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
【旧法】
(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等)
第611条 賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。

前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

旧法において、賃借物の一部が賃借人の過失によらないで「滅失」したときに、賃借人に滅失した部分の賃料の減額請求を認めており、その場合に残存する部分のみでは賃借した目的を達することができないときは、賃借人に契約の解除を認めています。

この規定は、当事者双方の責めに帰することができない事由によって賃借物の一部が「滅失」した場合に、危険負担の債務者主義の規定(旧法536条1項)により、滅失部分の賃料債務は「当然に」消滅することになりますが、それを「賃借人の請求」をまって減額されることにしたものであると説明されています。

そこで、本条の改正部分ですが、2点あります。まず、旧法では賃借物の一部「滅失」だけに限定していた減額事由を、賃借物の一部が滅失「その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合」というふうに広げています。「その他の事由」というのは、具体的には、賃借物の一部が「利用」できなくなったような場合です。賃料というのは賃借物の使用収益の対価ですから、滅失でなくても、使用収益の可能性がなければ、それに対応する賃料も発生しないものとすべきです。これは、賃借物が「一時的」に利用できないという場合も同様で、使用収益が一定の範囲で妨げられているという点で、賃借物の一部が利用できない場合と同じです。このような場合も含むものとして、改正法では上記のような表現に変わりました。

なお、このように賃借物の一部滅失に限らず、一部が利用できなくなった場合等には、第2項によって解除も認められています。

次に、旧法では、賃料の減額は「請求することができる」というふうに、当然に減額されるのではなく、賃借人の請求をまって減額される形になっていましたが、「減額される」というふうに、当然に減額される形に変更になっています。これは、先程の説明で分かるように、本来この規定は危険負担の債務者主義によるものだからです。