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第599条(借主による収去等)


【改正法】
(借主による収去等)
第599条 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。

2 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。

3 借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
【旧法】
(借主による収去)
第598条 借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

1.借主の収去義務及び権利(第1項及び第2項)

本条は、旧法では第598条に規定されていた借主による収去に関する規定で、全体として、条文のボリュームが増えていますが、基本的にこれらは旧法下で解釈で認められていたものを明文化したものです。

詳しく見ていきますと、旧法では第598条で借用物に附属させた物について、借主の収去の権利を規定していましたが、これはそのまま改正法の第2項に生き残っています。

借用物に附属させた物の収去については、それだけではなく借主の「義務」であることも明示されました(改正法第1項)。つまり、借主の附属物の収去は、権利でもあり、義務でもある、ということです。

そして、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、借主の収去義務が免除されます。これは従来から解釈で認められていたものです。

そして、この改正法第599条第1項と第2項は、第622条で賃貸借にも準用されています。第3項が準用されていないことについては、後述します。

2.原状回復義務(第3項)

次は、改正法の第3項についてですが、借用物に損傷がある場合の借主の原状回復義務を規定しています。ただ、例外として、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、借主は原状回復義務を負いません。この例外も、従来から解釈で認められていたものです。

ここで気になるのは、賃貸借の場合には、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」(いわゆる通常損耗)については、原状回復の対象に含まれていませんでしたが、本条ではこの文言(賃貸借の第622条ではカッコ書きで書かれています)が外されています。

これは、通常損耗について、賃貸借契約においては、賃料を受け取っている賃貸人が負担するのが妥当であるのに対し、無償契約である使用貸借においては、貸主・借主のどちらが負担するのかは一律に決めず、個々の使用貸借契約の内容や趣旨によって定めるのが妥当だと考えられたからです。

なお、先ほど本条の第1項と第2項は賃貸借に準用されているのに対し、第3項が準用されていないのは、賃貸借においては、第621条でこの通常損耗の対応も含めて別途規定されているからです。