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第576条(権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶)
【改正法】 (権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶) 第576条 売買の目的について権利を主張する者があることその他の事由により、買主がその買い受けた権利の全部若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。 |
【旧法】 (権利を失うおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶) 第576条 売買の目的について権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるときは、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。 |
※上記赤字の部分が改正部分です。
【解説】
本条は、「売買の目的について権利を主張する者がある」場合における買主の代金支払拒絶権を認めた規定です。
しかし、買主の代金支払拒絶権を認める場合として、「売買の目的について権利を主張する者がある」場合というのは、限定しすぎているのではないかという疑問があります。この点について、目的物上に用益物権があると主張する第三者がある場合や、債権売買において債務者が債務の存在を否定した場合等も含むとされていました。
そこで、買主が権利取得を疑うべき相当の理由がある場合には、一般的に買主の代金支払拒絶権を認めたのが改正法です。
条文では、「売買の目的について権利を主張する者がある」という部分に「ことその他の事由により」という文言を追加しています。それに伴い「権利の全部又は一部を失うおそれ」は「権利の全部若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれ」というふうに表現が広げられています。