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第570条(抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求)


【改正法】
(抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求)
第570条 買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権、質権又は抵当権が存していた場合において、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、買主は、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
【旧法】
(抵当権等がある場合における売主の担保責任)
第567条 売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。

2 買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。

3 前2項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

この民法570条というのは、旧法でいうと大変有名な規定で条文数まで覚えている人が多いかと思いますが、瑕疵担保責任の規定でした。しかし、この瑕疵担保責任は、改正でなくなったわけではありませんが、規定の仕方が変わり、第562条~第564条に移行しています。

改正法の第570条は、旧法でいうと第567条ということになります。この旧567条の規定は、売買の目的物に抵当権等があれば、契約を解除したり(第1項)、損害賠償を請求できる(第3項)という点と、買主が費用を支出して所有権を保存したときの費用償還請求を定めています。

このうち、第1項と第3項については、権利に瑕疵がある場合の契約不適合責任ということで、改正法では第565条で処理されることになります。したがって、第1項と第3項は削除されました。

ただ、気を付けて欲しいのは、旧567条1項・3項によれば、売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により「買主がその所有権を失ったとき」は、契約を解除したり、損害を賠償したりできると規定されていることです。この規定が削除されて、第565条に吸収されたということは、売買の目的である不動産について先取特権又は抵当権が存していた場合は、それだけで売買の目的物に権利の瑕疵があるということになるので、買主が所有権を失う前であっても、解除・損害賠償ができるということになります。

次に旧法第2項については、これはそのまま改正法にも残っており、それが改正法第570条です。つまり、買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権、質権又は抵当権が存していた場合、買主が第三者弁済や抵当権消滅請求により、費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、買主は、売主に対し、その費用の償還を請求することができます。