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第565条(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)


【改正法】新設
(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)
第565条 前3条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。
【旧法】
なし

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

第562条から第564条までは、「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」という「物」に関する契約不適合でしたが、本条は、「権利が契約の内容に適合しないもの」という「権利」の契約不適合です。

ただ、「物」に関する契約不適合(第562~564条)の規定がそのまま準用されています。

したがって、「権利」の契約不適合でも、売主は、契約の内容に適合した権利を移転する追完義務を負うことになります。たとえば、売買契約の目的物に抵当権の負担があった場合には、売主は抵当権を消滅させるという追完義務を負うことになります。

なお、旧法によると権利の瑕疵についての担保責任の要件として買主の善意・悪意を定めていましたが、改正法によるとこのような要件は不要となっています。

そもそも、他人の権利の売買における判例で、悪意の買主に対して債務不履行による損害賠償請求を認めているものがあります。また、同じ他人の権利の売買で、買主が悪意であったとしても、当事者間において、売主がその権利を取得した上で買主に移転することを約し、それを前提に代金額を決定する場合もあります。そのような場合に売主を免責する必要はありません。

ということは、売主が責任を負うかどうかは売主が負った債務の内容により決まり、買主の主観的要素は、この債務内容の認定の中で考慮されていると考え、買主の主観的要件をおく必要はないということになり、削除されました。