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第548条(解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅)


【改正法】
(解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅)
第548条 解除権を有する者が故意若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。

(2項 削除)
【旧法】
(解除権者の行為等による解除権の消滅)
第548条 解除権を有する者が自己の行為若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。

2 契約の目的物が解除権を有する者の行為又は過失によらないで滅失し、又は損傷したときは、解除権は、消滅しない。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、旧法の不合理を修正したという内容の改正です。ただ、ちょっと読むと、第2項の内容を第1項但書に移行したという部分を除けば、何を改正したかは分かりにくいと思います。

まずは、用語の問題ですが、旧法では「自己の行為若しくは過失」と規定されていますが、この「行為」というのは「故意」のことだとされているので、改正で「自己の行為若しくは過失」→「故意若しくは過失」に言葉を改めています。

次に、まずは旧法の規定をしっかり見ておきましょう。旧法の規定では、第1項で故意又は過失によって契約の目的物を①損傷、返還不能(滅失した場合が典型例)にしただけでなく、②加工又は改造によって他の種類の物に変えたときは、解除権が消滅すると規定しています。

そして、第2項で、故意又は過失によらないで①滅失又は損傷したときは。解除権は消滅しないと規定しています。ということは、故意又は過失によらないで②加工又は改造によって他の種類の物に変えたときは、解除権は消滅することになります。①滅失又は損傷と、②加工又は改造で、扱いを異にするのはおかしいのではないか、ということです。

本来、目的物の引き渡しを受けた者は、自己の物として自由に加工、改造できます。それにもかかわらず、解除権の存在を知らない解除権者が、目的物を加工又は改造したからといって、解除権が消滅するというのは不合理です。そこで、改正法では、加工又は改造した場合にも解除権は消滅しないとしました。

その際の規定方法として、第2項を削除して、第1項但書として、①滅失又は損傷だけでなく、②加工又は改造の場合もまとめて、「解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない」として、加工又は改造の場合にも解除権が消滅しないとしました。