※この記事は一般的な条文解説で、宅建等の資格試験の範囲を超えた内容も含みます。当サイトの記事が読みやすいと感じた方は、当サイトと資格試験向け教材の関係をご覧下さい。

第502条(一部弁済による代位)


【改正法】
(一部弁済による代位)
第502条 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる

2(新設)前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。

3(新設)前2項の場合に債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先する。


4 第1項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。
【旧法】
(一部弁済による代位)
第502条 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。

2 前項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、一部弁済による代位の規定です。この問題についても、判例や争いのある論点があり、それらを整理する必要があり、実際にも重要な改正がなされました。

まず、第1項ですが、一部弁済の場合、旧法では代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使するとしていますが、大審院の判例では、「代位者」は単独で原債権の担保権を実行することができるとしていました。これについては、代位者が単独で担保権を行使してしまうと、債権者が換価時期を自ら選択する利益が奪われてしまうので、求償権の保護という代位制度の目的を逸脱して債権者に不利益を与えるものだという批判があります。

逆に、「債権者」が単独で担保権等の権利を行使することができるかどうかについても、条文上明らかではありません。そこで、改正法では第2項を新設して、「債権者は、単独でその権利を行使することができる」旨を規定しました。

以上より、改正法は、一部弁済による代位者は、債権者とともに権利を行使できる旨を規定しつつも(第1項)、債権者は単独で権利を行使できる旨を規定し(第2項)、代位者の単独での権利の行使は認められないものと考えられます。

次に、担保権が実行された場合、その配当について、債権者と代位者との優劣関係については、「債権者とともにその権利を行使する」という文言からは明らかではありません。これについては、判例は債権者が優先するとしており、学説もそれを支持する見解が有力です。そこで、第3項を新設し、債権者と代位者がともに権利行使する場合、又は債権者が単独で権利行使する場合について、担保目的物の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭については、代位者が行使する権利に優先する旨を規定しました。