第470条(併存的債務引受の要件及び効果)
【改正法】(新設) 第5節 債務の引受け 第1款 併存的債務引受 (併存的債務引受の要件及び効果) 第470条 併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。 2 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。 3 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。 4 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。 |
【旧法】 なし |
※上記赤字の部分が改正部分です。
【解説】
1.総論
本条からは、「節」として追加された債務引受の規定です。旧法は、「債権」譲渡の規定はありましたが、「債務」引受の規定は存在しませんでした。しかし、判例・学説は、債務引受は認めていましたので、この規定を新設しました。
債務引受も種類がありますが、本条はその中で併存的債務引受について、その要件と効果を規定しています。
ただ、この規定は、従来の判例・学説で認められていた内容を条文化したものといえます。従来の判例・学説の状況を知りたい方は、下記のページを参照して下さい。
→債務引受
2.併存的債務引受とは(第1項)
本条の第1項で併存的債務引受の内容が規定されていますが、それによると、「併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する」ということになります。
債権者A、債務者B、引受人Cとして説明すると、併存的債務引受があったとしても、従来の債務者Bは債務を免れることなく、Bと引受人Cが連帯して同一内容の債務を負担することになります。これは、保証のような人的担保の機能があるとされます。
3.要件
この併存的債務引受については、まず、「債権者」と「引受人」となる者との契約によってすることができます(第2項)。
併存的債務引受が、「保証」と同じ機能があるということは、保証契約が「債権者」と「保証人」の契約で締結できるのと同様に、併存的債務引受も「債権者」と「引受人」となる者との契約によってすることができるわけです。
次に、併存的債務引受は、「債務者」と「引受人」となる者との契約によってもすることができます(第3項)。この債務者・引受人間で併存的債務引受ができるかどうかについては、判例は「第三者のためにする契約」として認めていました。改正法もこの考え方を受け継いでいるのでしょう。第三者のためにする契約は、第三者(債権者A)の受益の意思表示が必要ですから、改正法第3項も「債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる」としています。
それだけではなく、第4項で債務者・引受人間でなされた併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従うこととされています。
なお、先程、併存的債務引受は保証と同じ機能があると書きましたが、保証と同様に、契約は書面で行うべきだということも考えられますが、併存的債務引受にもいろいろな場面で使われるからということでしょうか、書面ということは要件とされませんでした。