第458条の2(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
【改正法】(新設) (主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務) 第458条の2 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。 |
【旧法】 なし |
※上記赤字の部分が改正部分です。
【解説】
本条は、改正法で新設された規定です。保証人からの請求に対して、保証債務の債権者に主たる債務の履行状況に関する状況の提供を義務付けています。
そもそも保証契約については、平成16年改正の際に、保証人保護の観点から、保証を慎重にするため、保証意思が外部的にも明らかになっている場合に限りその法的拘束力を認めるものとすることが相当であるということから、保証契約の締結を書面ですることを要求しました(446条2項)。
本条は、この保証人保護をより一層拡充する観点から、保証契約締結の際に、債権者に対して、保証人が保証の意味を理解するのに十分な内容や、主たる債務の履行状況に関する情報を提供することを義務付けたものです。
保証人になろうとする者は、主たる債務の履行状況を知りたいのは当然です。たとえば、主債務が履行されていない場合に発生する遅延損害金の額や、主債務の残高がいくらか等です。
しかし、このような情報を保証人に提供する義務を債権者に課している規定はありませんでした。そこで、保証人が銀行等の債権者に対して問い合わせをすると、債権者は、この問い合わせに対して情報を提供してよいかどうかの判断に困り対応に苦慮していたようです。なぜならば、これらの情報は主債務者の財産的な信用に関わる情報であり、これを「法律の根拠」なく保証人に提供することは、守秘義務や個人情報保護に反するおそれがあるからです。
なお、本条の情報の提供義務は、あくまで「保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合」に限られています。これは、これらの情報は主債務者の財産的な信用に関わる情報であることから、主債務者から委託を受けていない保証人にまで、この情報の提供を受ける権利を認める必要はないからです。つまり、主債務者から委託を受けずに勝手に保証人になった者に対して、主債務者の財産的な信用に関する情報を知られては困ります。
情報提供の対象となる債務は、「主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの」です。これは保証債務に関する第447条1項「保証債務は、『主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの』を包含する」という規定と対応しています。
提供する情報は、「不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額」になります。
この情報提供の趣旨は、個人保証人の保護だけに限らず、保証人が法人である場合にも妥当しますので、この保証人は、個人だけでなく、法人も含まれます。
最後に、債権者がこの情報提供義務を怠ったことにより、保証人が損害を受ければ、通常の債務不履行であり、保証人は債権者に対してこの損害の賠償を請求することができます(415条)。