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第442条(連帯債務者間の求償権)


【改正法】
(連帯債務者間の求償権)
第442条 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。

2 (略)
【旧法】
(連帯債務者間の求償権)
第442条 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。

2 前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

1.一部弁済の場合の求償

本条は、第1項のみの改正です。旧法には規定がありましたが、その旧法の規定の解釈について議論のある部分を補充・追加するような形での法改正になっています。

まず、旧法の規定について見ていきましょう。連帯債務者の一人が弁済等で共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する旨を規定しています。

第442条(連帯債務者間の求償権)

たとえば、債権者Aが連帯債務者B・C・Dに対して30万円の債権を有していたとします。連帯債務者B・C・Dの負担部分はそれぞれ10万円です。

旧法の規定によれば、BがAに対して30万円の弁済をすれば、C及びDに対してそれぞれ10万円ずつ求償することができます。これについては、問題ありません。もちろん改正法においても同様の結論になります。

しかし、Bが30万円に満たない一部弁済をした場合の求償関係は、旧法では必ずしも明確ではありませんでした。特に、Bが自己の負担部分である10万円以下の弁済をした場合にC及びDに対して求償できるかについては議論がありました。

この点について、判例は、連帯債務者の一人が自己の負担部分に満たない弁済をした場合であっても、他の連帯債務者に対して割合としての負担部分に応じた求償をすることができるとしていました(大判大正6年5月3日)。したがって、Bが6万円の弁済をすれば、C及びDに対してそれぞれ2万円ずつの求償をすることができます。

この判例を条文上も明らかにしたのが改正法です。具体的には、「その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず」という文言を追加した部分がそれに当たります。

2.代物弁済又は更改の場合の求償(支出した財産の額が共同の免責を得た額を超える場合)

次に、旧法も改正法も同じ文言ですが、求償できるのは連帯債務者の一人が「弁済」した場合だけに限りません。つまり、求償できるのは、弁済をし、「その他自己の財産をもって共同の免責を得たとき」になります。具体的には、代物弁済や更改で共同の免責を得たような場合です。

そして、この代物弁済や更改の場合には、実際に連帯債務者の一人が支出した財産の額が、共同の免責を得た額を超える場合があります。上記の例でいうと、Bが30万円の弁済の代わりに、45万円の価格の別のものを引き渡したような場合です。このような場合に、BはC及びDに対していくら求償することができるのかが問題になります。この場合には、Bは共同免責額以上に他の連帯債務者に求償することはできないと解するのが一般的です。つまり、BはC及びDに対してそれぞれ15万円を求償することはできず、10万円を限度に求償することができるだけです。これは納得できると思います。Bの勝手な行為によってC及びDの負担が増えるいわれはありません。

そこで、改正法はそのことを明記しています。「その(支出した)財産の額(45万円)が共同の免責を得た額(30万円)を超える場合にあっては、その免責を得た額(30万円)」(第1項カッコ書き)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する、という部分がそれです。

なお、その(支出した)財産の額が共同の免責を得た額を「超えない」場合にどうなるかというと、普通に上記の第1項カッコ書きの部分を外して読めばいいだけで、「その免責を得るために支出した財産の額(たとえば、15万円)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する、ということになります。したがって、BはC及びDに対して5万円ずつ求償することができます。