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第439条(連帯債務者の一人による相殺等)
【改正法】 (連帯債務者の一人による相殺等) 第439条 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。 2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。 |
【旧法】 (連帯債務者の一人による相殺等) 第436条 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。 2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。 |
※上記赤字の部分が改正部分です。
【解説】
1.第1項
この第1項は、普通に相殺に絶対効を認める規定です。相殺は、履行と同様、債務を消滅させる行為であり、これに絶対効を認めることには特に異論はありません。
したがって、第1項は「すべて」→「全て」という文言が変更されている以外は、全く同一内容です。
2.第2項
第2項については改正がありました。第1項は、連帯債務者の一人が反対債権を有している場合に、実際に「相殺した」ときは、相殺の絶対的効力を認める規定ですが、第2項は、反対債権を有する連帯債務者の一人が「相殺をしない」ときに、反対債権を有しない他の連帯債務者に相殺の援用を認める規定です。
しかし、反対債権を有しない連帯債務者に相殺の援用を認めることは、他人の債権の処分を認めることになるので、不当であるという指摘がありました。そこで、学説上も、この規定は、相殺権を有する連帯債務者の負担部分の範囲で他の連帯債務者は「弁済を拒絶」することができる旨を定めたものであるとする見解が有力でした。
そこで、改正法では、この学説のように、反対債権を有する連帯債務者以外の連帯債務者に、相殺の援用権を認めるのではなく、「その連帯債務者(反対債権を有する連帯債務者)の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる」ということで、履行の拒絶権を認める形に改めました。