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第418条(過失相殺)


【改正法】
(過失相殺)
第418条 債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
【旧法】
(過失相殺)
第418条 債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、債務不履行における過失相殺の規定ですが、過失相殺において考慮される債権者の過失について、旧法は「債務の不履行」に関する過失についてのみ考慮しています。

しかし、これについては、従来の判例・学説は、①債務不履行の発生についての債権者の過失だけでなく、②損害の発生についての債権者の過失や、③損害の拡大についての債権者の過失も考慮され、損害額が減少すると考えています。

したがって、旧法の条文からは、②と③について債権者の過失が考慮されるという点が読み取り難いので、旧法の「債務の不履行」という文言だけでなく、「又はこれによる損害の発生若しくは拡大」という文言を追加しています。

なお、旧法は、過失相殺の効果として、債権者に過失があったときは、必ずこれを考慮しなければならず、また、損害賠償額の減額だけでなく、免除も認めるとしている(必要的減免)。これに対しては、同じ公平の原則と信義則に基づく不法行為の場合の過失相殺は、任意的軽減であることと均衡を失するという考え方もありましたが、結局変更はなされなかったようです。