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第148条(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)


【改正法】
(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)
第148条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
三 民事執行法(昭和54年法律第4号)第195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
四 民事執行法第196条に規定する財産開示手続

2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。
【旧法】
(時効の中断事由)
第147条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一 請求
差押え、仮差押え又は仮処分
三 承認

(差押え、仮差押え及び仮処分)
第154条 差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、旧法のどの条文と対応しているのか分かりにくいですが、旧法147条2号と154条「差押え」の部分と関連します。

最初に対応関係をまとめておきましょう。

   条文 効果
旧法 改正法 完成猶予 更新
差押え 147条2号 148条
仮差押え又は仮処分 149条 ×

旧法147条2号は、「差押え、仮差押え又は仮処分」を時効の中断事由としていました。改正法は、このうち「差押え」と「仮差押え又は仮処分」を分断し、「差押え」は第148条(本条)で、「仮差押え又は仮処分」は第149条(次条参照)で規定し直しています。

そして、旧法で文言上、時効の中断事由とされていた「差押え」について、差押えをしない強制執行や担保権の実行等も対象とし、新たに財産開示手続も対象としました。

これらの事由について、その効果として、その事由が終了するまでの間は、時効の完成を猶予しています(第1項)。

そして、強制執行等により債権の全額回収に成功すれば、時効の問題は残らないでしょうが、強制執行等がうまくいかなかった場合には、依然として時効の問題が残ることもあります。したがって、これらの各事由が終了した時から「新たにその進行を始める」として、時効の更新の効果も生じると規定しました(第2項)。

つまり、強制執行等は、時効の完成猶予の効果と、時効の更新の効果の両方が生じます。これが、次条で規定する仮差押え・仮処分(時効の完成猶予の効果しか生じない)との違いで、両者を分けて規定しているわけです。

なお、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合には、その終了の時から6箇月を経過するまでは、時効の完成が猶予されますが、更新の効果は生じません(第1項カッコ書き、第2項)。