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第130条(条件の成就の妨害等)


【改正法】
条件の成就の妨害等
第130条 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

2(新設) 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。
【旧法】
条件の成就の妨害
第130条 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条の改正は、第2項の新設ということになります。

旧法では、条件の成就によって「不利益」を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときについて規定されており、その場合、相手方はその条件が成就したものとみなすことができます。この規定は、そのまま改正法の第1項に受け継がれています。

しかし、立場が逆になって、条件の成就によって「利益」を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときについては、旧法には規定がありません。しかし、いずれの場合も状況は同じようなものであり、不正に条件を成就させた当事者に、その利益を与える必要はありません。判例(最判平6年5月31日)も、旧法の規定を類推適用して、条件が成就しなかったものとみなしています。

ところで、新設された第2項は、第1項を裏返したような規定の仕方になっていますが、第1項では、「故意に」条件の成就を妨げた、という言葉が使われているのに対し、第2項では、「不正に」条件を成就させたという言葉が使われています。

これは、たとえば、第2項で「故意に」という言葉を使うと、当事者が意欲的に条件を成就することが想定されている場合に、条件が成就したとしても、その成就を否定されるおそれがあるからだとされています。

たとえば、大学受験に合格すれば時計を贈与するというような条件がある場合、受贈者は当然、頑張って(つまり、「故意に」)勉強して条件を成就させようとするわけです。そのような場合に、「故意に」条件を成就させた、と言われてしまえば、頑張って合格したことが無意味になります。上記の事例で、条件の成就を否定する必要があるのは、たとえば、カンニングを行って合格したという場合です。そこで、「故意に」ではなく、「不正に」という言葉を使いました。