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第90条(公序良俗)


【改正法】
(公序良俗)
第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
【旧法】
(公序良俗)
第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は公序良俗に反する法律行為に関する規定です。改正事項は、上記の条文を見てもらえば分かる通り、旧法にある「事項を目的とする」という文言を削除しただけです。ちなみに、この「目的とする」というのは、「内容とする」という意味です。つまり、公序良俗に反する事項を内容とする法律行為という意味になります。

ちょっと改正の趣旨が分かりにくいところですが、公序良俗に反する事項を内容とする法律行為というのは、たとえば、人身売買のようなものです。

しかし、現在の判例・学説によると、法律行為が公序良俗に反する事項を目的としているかどうかだけではなく、法律行為が行われた過程その他の事情を考慮して、法律行為が公序良俗に反しているかどうかを判断しています。たとえば、賭博の用に供することや賭博で負けた債務の弁済に充てるという動機の下で行われた金銭消費貸借契約は、法律行為自体は金銭消費貸借ですから、公序良俗に反するとはいえません。しかし、その法律行為が行われた過程等を考慮して公序良俗に反するかどうかを判断していました(最判昭47年4月25日、最判昭61年9月4日)。

そこで、「事項を目的とする」という文言が外されました。

その他、公序良俗に違反する法律行為として、よく事例に挙げられ、また判例にも登場する暴利行為について、公序良俗違反の法律行為として明文化すべきではないか、という点が議論されましたが、見送られたようです。