敷地共有者等が置く管理者及び敷地共有者等集会に関する区分所有法の準用等
【解説】
1.敷地共有者等が置く管理者及び敷地共有者等集会に関する区分所有法の準用(第1項)
第2条により、区分所有建物が全部滅失した場合でも、敷地共有者等は集会を開き、管理者を置くことができます。そこで、区分所有法の「第4節管理者」と「第5節規約及び集会」の規定を必要な読み替えを行った上で準用しています。
この準用は、区分所有法の団地準用ほどではないかもしれませんが、それに負けず劣らず難解な条文となっています。
そこで、具体的にどの条文が準用され、また、準用の際にどの言葉をどのように読み替えるのかについて、下記にその準用の内容を示したいと思います。
準用される条文は普通の黒字で、準用されない条文は薄いグレーで表示してありますので、準用されない条文は背後に退く形になりますが、元の文字は読み取れるようにしています。
また、赤字は「読み替え」た後の条文であることを意味しています。
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第4節 管理者
(選任及び解任)
第25条 敷地共有者等は、敷地共有者等集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
2 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各敷地共有者等は、その解任を裁判所に請求することができる。
(権限)
第26条 管理者は、敷地共有持分等に係る土地を保存し、及び敷地共有者等集会の決議を実行する権利を有し、義務を負う。
2 管理者は、その職務に関し、敷地共有者等を代理する。敷地共有持分等に係る土地について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
4 管理者は、敷地共有者等集会の決議により、その職務(第2項後段に規定する事項を含む。)に関し、敷地共有者等のために、原告又は被告となることができる。
5 管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第35条第2項から第4項までの規定を準用する。
(管理所有)
第27条 管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
2 第6条第2項及び第20条の規定は、前項の場合に準用する。
(委任の規定の準用)
第28条 特別措置法に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。
(敷地共有者等の責任等)
第29条 管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき敷地共有者等がその責めに任ずべき割合は、敷地共有持分等の価格の割合と同一の割合とする。ただし、規約で建物並びにその敷地及び附属施設の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割合による。
2 前項の行為により第三者が敷地共有者等に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行うことができる。
第5節 規約及び集会
(規約事項)
第30条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
3 前2項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
4 第1項及び第2項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
5 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。
(規約の設定、変更及び廃止)
第31条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
2 前条第2項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。
(公正証書による規約の設定)
第32条 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、第4条第2項、第5条第1項並びに第22条第1項ただし書及び第2項ただし書(これらの規定を同条第3項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる。
(規約の保管及び閲覧)
第33条 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、敷地共有者等又はその代理人で敷地共有者等集会の決議で定めるものが保管しなければならない。←議事録、区分所有法第45条第1項・第2項の電磁的記録に準用
2 前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。←議事録、区分所有法第45条第1項・第2項の電磁的記録に準用
3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。
(集会の招集)
第34条 集会は、管理者が招集する。
2 管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない。
3 議決権の五分の一以上を有する敷地共有者等は、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
4 前項の規定による請求がされた場合において、二週間以内にその請求の日から四週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかつたときは、その請求をした敷地共有者等は、集会を招集することができる。
5 管理者がないときは、議決権の五分の一以上を有する敷地共有者等は、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
(招集の通知)
第35条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各敷地共有者等に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
2 一の専有部分を所有するための敷地利用権に係る敷地共有持分等を数人で有するときは、前項の通知は、第40条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。
3 第1項の通知は、敷地共有者等が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。
4 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第1項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。
5 第1項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が特別措置法第4条第1項、第5条第1項、第15条第7項又は第17条第2項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。
(招集手続の省略)
第36条 集会は、敷地共有者等全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。
(決議事項の制限)
第37条 集会においては、第35条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
2 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 第1項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。
(議決権)
第38条 各敷地共有者等の議決権は、敷地共有持分等の価格の割合による。
(議事)
第39条 集会の議事は、特別措置法に別段の定めがない限り、議決権の過半数で決する。
2 議決権は、書面で、又は代理人によつて行使することができる。
3 敷地共有者等は、敷地共有者等集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)によつて議決権を行使することができる。
(議決権行使者の指定)
第40条 一の専有部分を所有するための敷地利用権に係る敷地共有持分等を数人で有するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。
(議長)
第41条 集会においては、別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した敷地共有者等の一人が議長となる。
(議事録)
第42条 集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。
3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した敷地共有者等の二人がこれに署名押印しなければならない。
4 第2項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び集会に出席した敷地共有者等の二人が行う法務省令で定める署名押印に代わる措置を執らなければならない。
5 第33条の規定は、議事録について準用する。
(事務の報告)
第43条 管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。
(占有者の意見陳述権)
第44条 区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる。
2 前項に規定する場合には、集会を招集する者は、第35条の規定により招集の通知を発した後遅滞なく、集会の日時、場所及び会議の目的たる事項を建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。
(書面又は電磁的方法による決議)
第45条 特別措置法により集会において決議をすべき場合において、敷地共有者等全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る敷地共有者等の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。
2 特別措置法により集会において決議すべきものとされた事項については、敷地共有者等全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。
3 特別措置法により集会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。
4 第33条の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第1項及び第2項の電磁的方法が行われる場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。
5 集会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。
(規約及び集会の決議の効力)
第46条 敷地共有者等集会の決議は、敷地共有者等の特定承継人に対しても、その効力を生ずる。
2 占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。
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以上が準用の結果ですが、若干気を付けておきたいことを書きます。
まず、建物は全部滅失しているので、専有部分の床面積を基準とした議決権という概念は出てきません。準用後の第38条です。
「各敷地共有者等の議決権は、敷地共有持分等の価格の割合による。」つまり、敷地利用権の割合になるわけです。
敷地利用権の割合は、専有部分の持分割合ではなく、分譲契約によって定まっています。
また、この敷地共有者等集会は、あくまで再建決議や敷地売却決議をするまでの暫定的なものですから、規約を定めることはできません。第2条でも「集会を開き、及び管理者を置くことができる」となっています。したがって、第5節の規定のうち、規約に関する部分は準用されません。
これに関連して、集会の招集通知に関して、通知期間の伸縮の規定が準用されていませんが、これは規約が存在しないので、規約での伸縮はできないからです。
2.招集通知(第2項・第3項)
第3条1項によって「集会」に関する区分所有者の規定が、敷地共有者等集会に準用されていますが、集会を開催するためには敷地共有者等に対して集会の招集通知をする必要があります。
通常の区分所有建物の集会の招集通知は、「専有部分が所在する場所」や「建物内の見やすい場所に掲示」することも可能でした。
しかし、建物の全部滅失の場合はそれは不可能ですし、大規模な災害の場合、敷地共有者等の所在が不明になっている場合もあります。そこで、第2項で、招集通知は、敷地共有者等の所在を知ることができないときは、滅失した区分所有建物に係る建物の「敷地」内の見やすい場所に掲示してすることができるようになっています(第2項)。
そして、この方法による場合は、掲示をした時に通知が到達したものとみなされます。ただ、招集した者が敷地共有者等の所在を知らないことについて過失があったときは到達の効力は生じません(第3項)。
この「過失」というのは、集会を招集するものが合理的に期待される程度の調査をしていない場合で、たとえば、災害時に備えて事前に区分所有者の緊急連絡網を整備していたにもかかわらず、その連絡先に所在の確認すらしていないような場合は、過失があるものとされます。