下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 平成22年 問9
【問 9】 契約の解除に関する次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった2個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。
(判決文)
同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった2個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。
1 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされても、それらの契約の目的が相互に密接に関連付けられていないのであれば、甲契約上の債務の不履行を理由に甲契約と併せて乙契約をも解除できるわけではない。
2 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされた場合、甲契約の債務が履行されることが乙契約の目的の達成に必須であると乙契約の契約書に表示されていたときに限り、甲契約上の債務の不履行を理由に甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。
3 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされ、それらの契約の目的が相互に密接に関連付けられていても、そもそも甲契約を解除することができないような付随的義務の不履行があるだけでは、乙契約も解除することはできない。
4 同一当事者間で甲契約(スポーツクラブ会員権契約)と同時に乙契約(リゾートマンションの区分所有権の売買契約)が締結された場合に、甲契約の内容たる屋内プールの完成及び供用に遅延があると、この履行遅延を理由として乙契約を民法第541条により解除できる場合がある。
【解答及び解説】
【解法のポイント】本問は、具体的な知識の有無を問うのではなく、試験会場の現場で考えて正誤を判断させようとする問題です。このような問題は、今後も出題が予想されます。本問の解説のように、与えられた「判決文」のような問題文をしっかり読んでいれば、難しい問題ではないので、むしろ「楽だ!」と思って下さい。
【参考資料】最判平8.11.12(平成8(オ)1056)
【参考資料】宅建物語~事例11(売買契約の解除)
【問 9】 正解 2
本問の判決文は、以下の内容からなっている。
① 同一当事者間で、形式は2個以上の契約から成る場合でも
② 目的が相互に密接に関連付けられ、社会通念上、一方の契約が履行されるだけでは契約の目的が全体としては達成されない場合には
③ 甲契約上の債務不履行を理由に、甲契約と併せて乙契約も解除できる
以上を前提に各肢を見ていく。
1 正しい。本判決は、上記②より、2個以上の契約が相互に密接に関連付けられているのが前提である。
① 同一当事者間で、形式は2個以上の契約から成る場合でも
② 目的が相互に密接に関連付けられ、社会通念上、一方の契約が履行されるだけでは契約の目的が全体としては達成されない場合には
③ 甲契約上の債務不履行を理由に、甲契約と併せて乙契約も解除できる
以上を前提に各肢を見ていく。
1 正しい。本判決は、上記②より、2個以上の契約が相互に密接に関連付けられているのが前提である。
2 誤り。本判決が、形式は2個以上の契約であっても(上記①)、甲契約の債務不履行を理由に、乙契約の解除を認めているのは(上記③)、「社会通念」を理由としており(上記②)、本肢のようにそれが「契約書に表示」されているかどうかを問わない。
3 正しい。本判決では、甲契約と「併せて」乙契約の解除を認めるものであり(上記③)、そもそも甲契約を解除できないのであれば、乙契約を解除することはできない。
4 正しい。本肢のスポーツクラブ会員権契約とリゾートマンションの区分所有権の売買契約が、上記②を満たす場合には、甲契約の屋内プールの完成及び共用に遅延があると、乙契約も解除できる場合がある。
【参考資料】最判平8.11.12(平成8(オ)1056)
【参考資料】宅建物語~事例11(売買契約の解除)