下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成19年 問16

【問 16】 不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 表題部所有者であるAから土地を買い受けたBは、Aと共同してBを登記名義人とする所有権の保存の登記の申請をすることができる。

2 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該権利の共有者であるすべての登記名義人が共同してしなければならない。

3 権利が法人の解散によって消滅する旨の登記がされている場合において、当該権利がその法人の解散によって消滅したときは、登記権利者は、単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができる。

4 相続人に対する遺贈を登記原因とする所有権の移転の登記は、遺言執行者が指定されているか否かにかかわらず、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

【解答及び解説】

【問 16】 正解 1及び4

1 誤り。所有権の保存登記の申請をすることができるのは、①表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人、②所有権を有することが確定判決によって確認された者、③収用によって所有権を取得した者に限られる。表題部所有者から土地を買い受けたBを登記名義人とする所有権保存登記を申請することはできない。
*不動産登記法74条1項

2 正しい。共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該権利の共有者であるすべての登記名義人が共同してしなければならない。

【じっくり解説】→H25-14(2)参照

*不動産登記法65条

3 正しい。権利が人の死亡又は法人の解散によって消滅する旨が登記されている場合において、当該権利がその死亡又は解散によって消滅したときは、共同申請の原則の例外として、登記権利者は、単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができる。

【じっくり解説】

この問題の条文は、不動産登記法69条(死亡又は解散による登記の抹消)です。

「権利が人の死亡又は法人の解散によって消滅する旨が登記されている場合において、当該権利がその死亡又は解散によって消滅したときは、共同申請主義の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができる。」

これも、問題文では「人の死亡」の場合を除いていますが、「法人の解散」の部分については、ほぼ条文そのままの問題です。したがって、本問は「正しい」ということになります。

この不動産登記法の解説シリーズを通して、不動産登記法の問題が条文どおりが多いというのは、ご納得いただけたでしょう。

もともと、共同申請主義がとられているのは、登記の真正(正しいこと)を担保するためです。人の死亡等による場合は、戸籍謄本等によって死亡の事実が容易に証明できるので、登記の真正を害されるおそれがないからです。なお本条は、相続の場合ではありません。

「権利が人の死亡によって消滅する場合」の具体例は、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に規定されている終身建物賃貸借です。

この終身建物賃貸借は、一定の認定を受けた賃貸事業について、高齢者が死亡するまで終身にわたり居住することができるもので、死亡時に契約が終了し、建物の賃借権が相続されない一代限りの賃貸借契約です。

普通は賃借権も相続の対象となりますが、相続されずに、高齢者の死亡によって消滅するわけです。

また、法人が解散した場合に権利が消滅する場合も同様です。

*不動産登記法69条

4 誤り。相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
*不動産登記法63条3項


【解法のポイント】この問題は、本来肢1のみが正解でしたが、法改正により肢4も正解となっています。