宅建 過去問解説 平成10年 問36
【じっくり解説】
われわれは、手付金等の保全措置というのはよく勉強します。これは、出題頻度が高いので、しっかり準備しておく必要があります。
ただ、「保全措置」といえば、実は「支払金又は預り金の保全措置」というのもあります。これは過去問での出題頻度は、かなり落ちるとはいうものの、一応複数回出題されています。
宅建業法の条文でいうと、重要事項の説明の中に出てきますが、逆にいうとそこに出てくるくらいです(保証協会の条文の中に関連する条文は出てきます。)。重要事項の説明の中に出てくるわけですから、支払金又は預り金の保全措置を重要事項として説明しなさい、という規定です。
ということで、何となく「目にはしたことがあるけど、よく分からない」という受験生が大半ではないかと思います。
そこで、この「じっくり解説」の登場です。
不動産取引においては、いろいろな金銭が動きます。その中で「支払金又は預り金」というのは何かですが、これは宅建業法の施行規則に規定があります。
「代金、交換差金、借賃、権利金、敷金その他いかなる名義をもって授受されるかを問わず、宅地建物取引業者が受領する金銭」のことです。ということは、保全措置が必要な「手付金等」も含まれそうですが、これは条文で除外されています。
なお、この「手付金等」以外にも、本試験で問われているものとしては、「受領する額が50万円未満のもの」も除外されています。50万円という数字だけでなく、「未満」というのも含めて覚えておいて下さい。本問の「50万円」というのは、こういう意味があるわけです。つまり、50万円は50万円「未満」ではないので「支払金又は預り金」に該当しますよ、ということです。
ということで、「支払金又は預り金」は、いろいろな名目で支払われる金銭のうち、保全措置が必要な手付金等を除いたもの、とシンプルに考えて下さい。
具体的には、先ほどの定義に出てきた代金、交換差金、借賃、権利金、敷金以外に固定資産税、都市計画税の精算金、保証金、登録免許税の預り金などです。
そのような支払金や預り金についても保全措置というのがある、ということになります。
ただ、この支払金又は預り金の保全措置というのは、手付金等の保全措置と異なり、保全措置を講じることは義務付けられていません。ということで、本日の問題の正解は「誤り」ということになります。
最後に、本問とは直接関係はありませんが、先ほど書きましたように、支払金又は預り金の保全措置は、重要事項の説明の条文の中に規定がありますが、その規定では「支払金又は預り金を受領しようとする場合において、保全措置を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要」を説明せよ、となっています。
そして、支払金又は預り金の保全措置は、義務ではないので、保全措置を講じなければ終わりですが、その場合には、保全措置は講じない旨を説明しておけば大丈夫です。ただ、保全措置を講じないので、何も説明しないというのはダメです。上記の条文でも「保全措置を講ずるかどうか」を説明することになっています。