下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成10年 問36

【問 36】 宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者でないBと宅地の売買契約を締結しようとし、又は締結した場合に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 売買契約の締結に際し、AがBから預り金の名義をもって50万円を受領しようとする場合で、当該預り金が売買代金に充当されないものであるとき、Aは、国土交通省令で定める保全措置を講じなければならない。

2 売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を売買代金の額の2割と予定した場合には、違約金を定めることはできない。

3 BがAの事務所で買受けの申込みをし、1週間後にBの自宅の近所の喫茶店で売買契約を締結した場合、Bは、当該契約を締結した日から8日以内であれば、宅地建物取引業法第37条の2の規定により契約を解除することができる。

4 売買契約でAの債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定した場合は、Aの宅地の契約不適合を担保すべき責任に関し、BがAに対して契約不適合を通知すべき期間を宅地の引渡しの日から1年となる特約をすることができる。

【解答及び解説】

【問 36】 正解 2

1 誤り。50万円以上の支払金又は預り金について保全措置を講ずるかどうかは、重要事項の説明の対象ではあるが、手付金等とは異なって保全措置を講じることを義務づけられているわけではない。

【じっくり解説】

われわれは、手付金等の保全措置というのはよく勉強します。これは、出題頻度が高いので、しっかり準備しておく必要があります。

ただ、「保全措置」といえば、実は「支払金又は預り金の保全措置」というのもあります。これは過去問での出題頻度は、かなり落ちるとはいうものの、一応複数回出題されています。

宅建業法の条文でいうと、重要事項の説明の中に出てきますが、逆にいうとそこに出てくるくらいです(保証協会の条文の中に関連する条文は出てきます。)。重要事項の説明の中に出てくるわけですから、支払金又は預り金の保全措置を重要事項として説明しなさい、という規定です。

ということで、何となく「目にはしたことがあるけど、よく分からない」という受験生が大半ではないかと思います。

そこで、この「じっくり解説」の登場です。

不動産取引においては、いろいろな金銭が動きます。その中で「支払金又は預り金」というのは何かですが、これは宅建業法の施行規則に規定があります。

「代金、交換差金、借賃、権利金、敷金その他いかなる名義をもって授受されるかを問わず、宅地建物取引業者が受領する金銭」のことです。ということは、保全措置が必要な「手付金等」も含まれそうですが、これは条文で除外されています。

なお、この「手付金等」以外にも、本試験で問われているものとしては、「受領する額が50万円未満のもの」も除外されています。50万円という数字だけでなく、「未満」というのも含めて覚えておいて下さい。本問の「50万円」というのは、こういう意味があるわけです。つまり、50万円は50万円「未満」ではないので「支払金又は預り金」に該当しますよ、ということです。

【参考問題】平成3年 問45 肢1

ということで、「支払金又は預り金」は、いろいろな名目で支払われる金銭のうち、保全措置が必要な手付金等を除いたもの、とシンプルに考えて下さい。

具体的には、先ほどの定義に出てきた代金、交換差金、借賃、権利金、敷金以外に固定資産税、都市計画税の精算金、保証金、登録免許税の預り金などです。

そのような支払金や預り金についても保全措置というのがある、ということになります。

ただ、この支払金又は預り金の保全措置というのは、手付金等の保全措置と異なり、保全措置を講じることは義務付けられていません。ということで、本日の問題の正解は「誤り」ということになります。

最後に、本問とは直接関係はありませんが、先ほど書きましたように、支払金又は預り金の保全措置は、重要事項の説明の条文の中に規定がありますが、その規定では「支払金又は預り金を受領しようとする場合において、保全措置を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要」を説明せよ、となっています。

そして、支払金又は預り金の保全措置は、義務ではないので、保全措置を講じなければ終わりですが、その場合には、保全措置は講じない旨を説明しておけば大丈夫です。ただ、保全措置を講じないので、何も説明しないというのはダメです。上記の条文でも「保全措置を講ずるかどうか」を説明することになっています。

*宅地建物取引業法35条1項10号参照

2 正しい。宅地建物取引業者が売主となる売買契約において、損害賠償額の予定と違約金は、合算した額が代金の額の10分の2を超えてはならない。したがって、損害賠償額の予定を2割とすると、違約金を定めることができない。
*宅地建物取引業法38条1項

3 誤り。事務所等以外の場所において、買受けの申込み又は売買契約を締結した買主は、売買契約の解除を行うことができるが、事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除かれており、解除することはできない。
*宅地建物取引業法37条の2第1項

4 誤り。買主が担保責任を追及するために契約不適合を通知すべき期間については、その目的物の引渡しの日から2年以上となる特約は認められるが、引渡しの日から1年とする特約は無効である。これは損害賠償額の予定をした場合でも同様である。
*宅地建物取引業法40条


【解法のポイント】肢1の預り金については、あまりポピュラーな問題ではありませんが、実は前年にも出題されています。本問の正解自体は簡単に出ると思いますが、過去問は重要なんですね。