双務契約と片務契約


【解説】

1.双務契約

双務契約というのは、契約の当事者が互いに対価的な債務を負担する契約のことをいいます。

要するに、「双」方が義「務」を負担するので、「双務契約」というわけです。

民法の典型契約でいうと、売買契約、交換契約、賃貸借契約、雇用契約、請負契約、組合契約、和解契約などがこれに該当します。

具体的に売買契約で説明しますと、売買契約の売主は、引渡しや登記の移転義務を負いますし、買主は代金の支払義務を負い、売主・買主双方が義務を負担しています。

そして、双務契約は、すべて有償契約となります。双務契約は、契約の当事者が互いに対価的な債務を負担するからです。

この双務契約については、同時履行の抗弁権や危険負担などの規定が適用されることになります。


2.片務契約

これに対して、契約の当事者の一方だけが債務を負担する契約を片務契約といいます。

「片」方だけが義「務」を負担するので、「片務契約」というわけです。

民法の典型契約の中では、贈与契約、消費貸借契約、使用貸借契約がこれに該当します。

具体的に、贈与契約で説明しますと、贈与者(贈る側)は受贈者(もらう側)に対して財産を相手方に対して与える義務がありますが、受贈者はお金を払う義務がありません。タダなので贈与契約です。

ただ、当事者の一方の債務と、相手方の債務は対価的な関係にないといけないので、相手方も債務を負っているとしても、それが対価的な関係にないとすれば、それは片務契約になります。

たとえば、使用貸借は、タダで物を借りる契約ですが、貸主は借主に使用収益させる義務がありますが、一方で借主には目的物を返還する義務があります。

しかし、この貸主と使用収益させる義務と、借主の返還義務は対価的な関係にありません。貸主の使用収益させる義務と対価的な関係にあるのは、使用収益の対価、つまり賃料ということになりますが、貸主が借主に使用収益させて、借主がそれに賃料を払えば「賃貸借契約」になりますので、使用貸借ではありません。

使用貸借では、使用収益の対価たる賃料を支払わないので、やはり片務契約です。

なお、双務契約はすべて有償契約となりますが、片務契約は必ずしも無償契約になるとは限りません。片務有償契約というのがあるからです。 →「片務有償契約」を参照

ただ、無償契約はすべて片務契約になります。




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