「推定」と「みなす」(擬制)


【解説】

1.「推定」

法律の用語でよく「推定する」という表現と、「みなす」という表現が出てきます。

似たような言葉ですが、意味は異なります。

「推定」というのは、ある一定の事実(A)があった場合に、別の事実(B)があるものとして扱うが、そうではないという証明(反証)がなされると、別の事実(B)があるものとは扱われないことをいいます。

抽象的に表現すると分かりにくいですが、要は「反証が許される」ということです。

民法186条に「占有の態様等に関する推定」という規定があります。「占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。」という規定です。

この占有というと時効取得などで問題となりますが、この条文では、物を占有している者については、「所有の意思」「善意」「平穏」「公然」というのが、「推定」されることになります。

したがって、この推定された「所有の意思」「善意」「平穏」「公然」を否定したい者は、これを否定する証拠を出して反証しなければいけませんし、逆に反証に成功すれば、これらの事実は否定されます。


2.「みなす」(擬制)

これに対して、「みなす」というのは、「推定」と同じように、ある一定の事実(A)があった場合に、別の事実(B)があるものとして扱うわけですが、反証を許しません。

この「みなす」というので、非常に有名な規定は、未成年者の成年擬制に関する条文です。

ちなみに「擬制」というのは、「みなす」ということです。

民法753条の「婚姻による成年擬制)」には、「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。」規定されています。

これは民法は、未成年者(20歳未満)でも、婚姻(男性は18歳、女性は16歳から結婚できる)すれば、成年者として扱います、という規定です。

これはいくら反証しようとしても、婚姻していれば20歳未満でも「成年者」として扱うと決めているわけですから、どのように反証しても成年者扱いが否定されるわけではありません。


以上、「推定」と「みなす」の違いは、反証を許すかどうかの違いです。


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