「条件」と「期限」


【解説】

1.条件と期限の区別

普通、契約や意思表示をするときに、すぐその場で効力が生じるような場合もありますが、一定の「条件」や「期限」というものを付け加えることも結構多くなります。

たとえば、不動産のような重要な取引の場合は、店で物を買うように、その場でお金を渡して、商品を受け取ってということは少ないでしょう。不動産の売買契約をすれば、何月何日が引き渡しで、何月何日が代金の支払いでと、期限がつくことが多いと思います。

また、自宅を別の家に買い替えて、引越ししたいので、現在の自宅を人に売ろうと思うが、新しい家が見つからないうちに、現在の自宅を売ってしまっては住む場所に困るので、現在の自宅を売る際に、買い換える別の新しい家が見つかれば、現在の自宅を売ってあげようというような条件を付けたい場合もあるでしょう。

このように、条件と期限は、意思表示などについて一定の事実が発生したり、一定の時期が到来したときに効果を発生させようというものです。

この条件と期限は、普通、簡単に区別が付くことが多いと思います。

期限というのは、一定の時期が到来したときに効果が発生したりするもので、先ほどの例でいう、何月何日に引き渡す、というのは「期限」です。

条件というのは、一定の事実が発生したときに、効果を発生させたりするもので、先ほどの例で言うと、新しい家が見つかれば、今の家を売ってあげよう、というのが「条件」です。

ただ、この条件と期限というのは、区別しにくいというのか、その区別を間違えてしまうような場合もあります。たとえば、私の父が死亡すれば、この家を売ってあげよう、というような例です。

これは、条件ですか、期限ですか、と問えば、結構多くの人が「条件」と答えます。

「条件」だと答える人の多くは、言葉に惑わされていると思います。私の父が死亡「すれば」、という言葉です。「~ならば」と言われれば、普通「条件」と答えたくなります。

しかし、「私の父が死亡すれば」というのは、期限です。

条件と期限の見極め方は、確実に到来するかどうかで決めます。確実にやってくるのは「期限」、到来するかどうか分からないのが「条件」です。

「何月何日に引き渡す」という場合の、「何月何日」というのは、確実に時間が経てば到来します。だから、「期限」です。それに対して、「新しい家が見つかれば」というのは、新しい家が確実に見つかるとは言えないはずです。だから、これは「条件」です。

そこで、先ほどの「私の父が死亡すれば」という例を見てみましょう。人間は、いつかは確実に死にます。「私の父が死亡すれば売る」ということは、いつになるか分からないけれども、父親は確実に死亡しますので、必ず到来します。したがって、これは「期限」だということになります。



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