都市計画法29条(開発行為の許可)
【解説】
1.開発許可
「建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的」で「土地の区画形質の変更」を行うと、それは開発行為ということになり、都道府県知事の許可が必要となります。
本条は第1項で「都市計画区域又は準都市計画区域」、第2項で「都市計画区域及び準都市計画区域外の区域内」で開発行為を行う場合には、都道府県知事の許可が必要となっていますので、要するに全国どこで開発行為をしても原則として都道府県知事の許可が必要となります。
2.開発許可が不要な場合
(1) 総論
原則として、全国でどこでも開発行為を行う場合には開発許可が必要となりますが、ただ、この開発許可については、許可が不要になる例外が結構あります。
その例外が第1項・第2項の各号に規定されています。
それを一つずつ、見ていくことにしますが、これらの許可が不要な例外となっているのは、いくつかのパターンがあります。
もともと開発許可が必要となる理由は、公共施設の整った良好な市街地を整備しようというものです。したがって、開発許可が不要となるのは以下の3つの場合です。
- 他の法律で規制されているので開発許可は不要
- 市街化の誘因にならない
- 現状維持的なもの
この3つは説明が不要なくらい分かりやすいものだと思います。1.は他の法律で規制されているので、わざわざさらに開発許可を要求する必要がないということです。
2.はもともと市街化の誘因にならないので、乱開発されるおそれはないということです。
3.は現状維持的なもので新たな開発ではないということです。
他に、小規模開発の例外や、農林漁業用建築物の例外があります。
以下に、開発許可が不要となる場合について個別に見ていきます。
(2) 小規模開発(第1項1号)
この小規模開発が開発許可不要となるというのは、理屈は非常に分かりやすいですね。
いちいち小規模な開発にまでは開発許可が不要だということです。
問題は、この「小規模」というのが具体的にどれくらいか、ということです。都市計画法施行令の条文を見てみましょう。
[参照条文]都市計画法施行令(許可を要しない開発行為の規模)
第19条 法第二十九条第一項第一号の政令で定める規模は、次の表の第一欄に掲げる区域ごとに、それぞれ同表の第二欄に掲げる規模とする。ただし、同表の第三欄に掲げる場合には、都道府県(指定都市等(法第二十九条第一項に規定する指定都市等をいう。以下同じ。)又は事務処理市町村(法第三十三条第六項に規定する事務処理市町村をいう。以下同じ。)の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。第二十二条の三、第二十三条の三及び第三十六条において同じ。)は、条例で、区域を限り、同表の第四欄に掲げる範囲内で、その規模を別に定めることができる。
~表は下にまとめています~
2 都の区域(特別区の存する区域に限る。)及び市町村でその区域の全部又は一部が次に掲げる区域内にあるものの区域についての前項の表市街化区域の項の規定の適用については、同項中「千平方メートル」とあるのは、「五百平方メートル」とする。
一 首都圏整備法第二条第三項に規定する既成市街地又は同条第四項に規定する近郊整備地帯
二 近畿圏整備法第二条第三項に規定する既成都市区域又は同条第四項に規定する近郊整備区域
三 中部圏開発整備法第二条第三項に規定する都市整備区域
[参照条文]都市計画法施行令(法第29条第2項の政令で定める規模)
第22条の2 法第29条第2項の政令で定める規模は、1ヘクタールとする。
これでは、ややこしいので、条文の表をもとに、私がすべてを一覧表にまとめてみました。
ここで注意すべきは、やはり市街化調整区域でしょうね。市街化調整区域には、この小規模開発の例外というのはありません。つまりどんな小規模な開発行為でも、開発許可が必要となります。理由は、分かりますよね。市街化調整区域は原則として建物が建てられない地域ですから、建物を建てるための開発行為も、すべて開発許可が必要となるわけです。
それともう一点、市街化の状況等により、条例でこの規模を別に定めることができます。具体的には、市街化区域の1,000㎡も、非線引区域等の3,000㎡も、条例により300㎡まで、その数字を下げることができます。
(3) 農林漁業用建築物又はこれらの業務者の居住用建築物の建築目的(第1項2号)
この農林漁業用建築物等の建築目的の場合に開発許可が不要だというのは、市街化調整区域などで開発行為を行う場合ですが、もともと市街化調整区域というのは、最初に環境とか「農地」の保全などを行います。したがって、農林漁業用の建築物を建築するための開発行為は許可は不要となるわけです。
ただ、正確には市街化調整区域だけでなく、「市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内」ということですが、29条2項にも規定があって、「都市計画区域及び準都市計画区域外」でも開発許可が不要となっているので、要するに「市街化区域」以外で農林漁業用建築物の建築目的の開発行為には、都道府県知事の許可が不要だということになります。
逆に言えば、市街化区域内では農林漁業用建築物といえども、一般の建築物と同様、開発許可が必要になります(ただし、1,000㎡未満なら小規模開発ということで開発許可は不要です。)。
また、農林漁業用建築物だけでなく、農林漁業者の「居住用の建築物」の建築目的の場合も、開発許可は不要であることにも注意して下さい。
ちなみに、「農林漁業用建築物」というのは、具体的には都市計画法施行令20条に規定があります。
(4) 公益上必要な建築物(1項3号)
公益上必要な建築物の建築目的の開発行為は、市街化の誘因にならないということで、開発許可は不要です。
都市計画法においては、「駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所」が挙げられていますが、都市計画法施行令21条に、実にさまざまなものが列挙されています。
(5) 都市計画事業の施行として行う開発行為(1項4号)
「他の法律によって規制されている場合」として開発許可が不要となります。
(6) 土地区画整理事業の施行として行う開発行為(1項5号)
「他の法律によって規制されている場合」として開発許可が不要となります。
なお、これはあくまで「土地区画整理事業の施行」として行う開発行為については開発許可が不要になるという意味であって、土地区画整理事業が行われている区域内の開発行為であっても、土地区画整理事業の施行として行われていない開発行為は、原則どおり開発許可が必要となります。
(7) 市街地再開発事業の施行として行う開発行為(1項6号)
「他の法律によって規制されている場合」として開発許可が不要となります。
(8) 住宅街区整備事業の施行として行う開発行為(1項7号)
「他の法律によって規制されている場合」として開発許可が不要となります。
(9) 防災街区整備事業の施行として行う開発行為(1項8号)
「他の法律によって規制されている場合」として開発許可が不要となります。
(10) 公有水面埋立法第2条第1項の免許を受けた埋立地であつて、まだ同法第22条第2項の告示がないものにおいて行う開発行為(1項9号)
「他の法律によって規制されている場合」として開発許可が不要となります。
(11) 非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為(1項10号)
これは、現状維持的な行為として開発許可が不要です。
(12) 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの(1項11号)
これも、現状維持的な行為として開発許可が不要となります。
その他の行為で政令で定めるもの」は、具体的には、都市計画法施行令22条に規定があって、「仮設建築物の建築、車庫・物置その他これらに類する附属建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為」などが挙げられています。