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都市計画法9条(地域地区)

【解説】

1.用途地域

「地域地区」の中で、最も基本的なものが「用途地域」です。「用途」というのは「使い方」という意味です。つまり、基本的なその土地の「使い方」を決めていこうというのが「用途地域」です。基本的に日本の都市計画というのは、住み分けるという考え方でできています。住宅は住宅、商業施設は商業施設、工場は工場というふうに用途ごとに土地の使い方を分けています。

この用途地域は12種類あります。この12種類の用途地域は確実に覚えておいて下さい。これは、すぐに覚えて下さい。というのは、この都市計画法もそうですし、建築基準法もそうですが、いろいろな法規制は、この用途地域を基に定められていることが多いんです。したがって、この12種類の用途地域を基にいろいろな内容を学習していくわけですから、この用途地域の種類が頭に入っていないと他の範囲の勉強の基礎を欠くことになります。この用途地域を前提として都市計画法も決まっているし、建築基準法も決まっています。

2.住居系用途地域

それではこの用途地域を具体的に見ていきましょう。この中で一番覚えにくいのは住居系です。7つもあります。

上図を見て下さい。まず、①②グループです。第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域です。これは「低層」という言葉から分かりますように、2階建てくらいまでの一戸建ての建物が集まっているような地域です。建築基準法で勉強しますが、この地域の建物は原則として10m又は12mの高さまでしか認められません。イメージとしては閑静な住宅街です。

次は③④グループです。第一種中高層住居専用地域と第二種中高層住居専用地域ですね。これも「中高層」という言葉から分かりますように、マンションなどを建てるところです。

次は⑤⑥グループです。ここは「低層」とか「中高層」のような具体的なイメージが湧く言葉がありません。単に第一種住居地域、第二種住居地域となっていて、「住居」という言葉しかないわけですね。

このような表現になっているのは、「低層」とか「中高層」とかズバリと表現できないからです。つまり、「低層」住居も、「中高層」住居も混在しているような地域です。どちらとも言えないから、漠然と「住居」と表現している。「低層」=一戸建て、「中高層」=マンション、「住居」=両者が混在、という感じです。

次は⑦の準住居地域ですが、これは独立系というのか、特徴のあるものです。最近は車社会というのか、自動車を使って生活をする人が多くなっていますので、住居系の用途地域なんですが、自動車を使っている人が便利なように自動車関連施設があるような地域のことです。

ここまでは、「低層」とか「中高層」のようにグループ分けして見てきましたが、それぞれ「第一種」というのと「第二種」というのに分かれていたと思います。この「第一種」と「第二種」の違いについてです。

これは、「第一種」は商業施設(お店など)の立地を制限しているのに対し、「第二種」はある程度の商業施設の立地を許容しています。これは、住宅ばかりが建ち並んでいる方が、住環境が守られていいという人もいれば、ちょっとした買い物くらいは近所でできた方が便利だという人もいます。そこで、この「第一種」と「第二種」というのがあります。

以上は、理解ですが、試験では「言葉」で出題されるので、各用途地域の定義を確認し、キーワードを見ていきましょう。

今までの説明で内容は理解していると思いますので、キーワードを確認していきます。

上図の赤い字の部分がキーワードですが、①②については「低層」という言葉が入っているので誰でも分かります。そして、第一種と第二種の違いは、「第二種」というのは商業施設が入っているので、「主として」という言葉が入っています。つまり、住居の環境を維持するんですが、店もあるのであくまで「主として」住居の環境という表現になっているわけです。

③④も全く同じで、「中高層」という言葉が入っているので誰でもわかる。第一種と第二種の違いは「主として」という言葉があるかないかで見分ける。

⑤⑥も全く同じ。「住居」という言葉しかないので誰でも分かります。そして、第一種と第二種の違いは「主として」という言葉があるかないかで見分ける。

準住居地域は、もともと特徴のあるものなので、それほど区別に気を使う必要はありませんが、強いて言えば「道路の沿道」がキーワードです。

3.商業系用途地域

商業系の用途地域は、2つだけだから非常に簡単です。

まず、近隣商業地域ですが、近所に商店街やスーパーマーケットのようなものがあるところです。商業系といっても、日用品を買いに行くような店ですね。

それに対して、商業地域は、大規模な商業施設があるような場所です。オフィス街や歓楽街などがその例になります。

それではここも条文で定義を見てみましょう。

これは区別するのにそれほど難しくはありませんが、強いて言えば、近隣商業地域は、「近隣」と出てきますのですぐ分かります。内容的に言えば「日用品の供給」というのもキーワードとして押さえておけば万全でしょう。

商業地域は、説明する必要もないくらいですが、強いて言えば「商業」というキーワードくらいでいいでしょう。

4.工業系用途地域

用途地域の最後は、工業系の用途地域の3つです。

これも3つしかないので分かりやすいと思います。

まず、準工業地域は、町工場が集まっているような地域です。工場といっても、それほど周りの環境を悪化させないような工場です。

そして次に、これの対極として先に工業専用地域をみます。これは工場の中でも大規模なもので、石油コンビナートとか臨海工業地帯のような、本当に大きな工業ばかりが集まっているようなところです。工業「専用」地域というくらいですから、工業施設以外の立地が厳しく制限されます。

工業地域は、その中間で普通の工場等が集まっているところですが、工業専用地域と異なり、工業施設以外の立地もある程度認められます。

続いて、条文の定義を確認しておきます。

言葉としては、準工業地域は「環境の悪化をもたらすおそれのない」というのがポイントです。

次に、工業地域と工業専用地域は定義が非常に似ています。ここは「主として」という言葉の有無で区別するしかありません。後は一言一句同じです。工業専用地域は、「専用」という言葉から分かりますように、工業施設以外の立地は制限されます。したがって、「主として」という言葉がないんです。

さて、以上で用途地域の説明は終わりですが、ここで注意して欲しいことがあります。それは、商業系や工業系の用途地域であっても、近隣商業地域と準工業地域は住宅の立地をある程度予定しているという点です。

この観点は、いろいろなところで役に立ちます。近隣商業地域は「日用品の供給」を行うところですので、近所に家があることを前提にしています。準工業地域は、「環境の悪化をもたらすおそれのない」工場がある場所ですので、そこに住んでいる人もいます。

したがって、たとえば高層住居誘導地区は、商業施設等と住宅が併存するような地域に指定されますので、この近隣商業地域と準工業地域内に指定することもできます。

また、日影規制は、日照保護の規定ですから、住居系の用途地域だけでなく、この近隣商業地域と準工業地域にも指定することもできます。

5.特別用途地区

この特別用途地区というのは、用途地域だけでは不十分なところを補完するために定める地区です。

「用途地域内」がポイントで、ここを押さえておけば十分です。用途地域を補完するためのものだから用途地域内で定めるということです。

この特別用途地区は、以前は12種類くらいのパターンが決まっていて、その中から選ぶ形だったんですが、現在は市町村がこのパターンにとらわれずにその内容を定めることができます。ただ、分かりやすい例として、以前は文教地区と呼ばれていた地区がありました。学校が多くあるような地域です。このような地域には、風俗関係の店を作らないなどの規制を定めるのが特別用途地区です。

あと建築基準法で若干この特別用途地区に関する規制が出てきますが、それは建築基準法のときに説明します。

6.特定用途制限地域

この特定用途制限地域というのは、用途地域が定められていない土地は、土地の利用の規制が緩いのでいろいろな建物が建ってしまいます。そこで、このように土地について、良好な居住環境を確保するために、建築してはならない建築物を定め、土地利用をコントロールしようとする土地です。

ここで覚えておくべきポイントは、太字の「用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内」という部分です。

この表現が分かりにくいと思います。要するに「用途地域が定められていない土地」ということなんですが、「市街化調整区域を除く」となっているので、ややこしくなっているわけです。

上図を見て下さい。もともと市街化区域は、必ず用途地域を定めますので「用途地域の定められていない土地の区域」というものはありません。

その他の市街化調整区域・非線引区域・準都市計画区域というのは、用途地域を定めることができますので、それぞれに「用途地域の定められている区域」と「用途地域の定められていない土地の区域」というものが存在します。

この中の市街化調整区域内の「用途地域の定められていない土地の区域」は、ここから除かれていますので、上図でいうと網かけのかかった部分である非線引区域の「用途地域の定められていない土地の区域」と、準都市計画区域内の「用途地域の定められていない土地の区域」の部分についてのみ、この特定用途制限地域を定めることができるということです。

具体的に、特定用途制限地域で制限される建築物としては、危険物の製造工場、貯蔵・処理の用に供する建築物、風俗営業施設、一定規模以上の集客施設等が考えられます。
なお、建築基準法49条の2で、特定用途制限地域内の建築物の用途の制限は、当該特定用途制限地域に関する都市計画に即し、地方公共団体の条例で定めるとされているので、都市計画において定める建築物等の用途の制限は、制限の概要にとどめておくべきです。

7.高層住居誘導地区

この高層住居誘導地区は、文字通り「高層住居(マンション)」を都心部に「誘導(誘致)」する地区です。

都心部というのは、昼間は人が多いが、夜になると人が極端に少なくなる地区があります。それはちょっと物騒です。また、都心部のマンションというのはいろいろな商業施設があって便利です。そこで、都心部にもマンションを作って人が住んで下さいと誘導する地区のことです。

これはまず、5つの用途地域内で指定されます。

この5つの用途地域はいわゆる「混在系」の用途地域です。都心部にもマンション(住居)を建てようとするわけですから、住居も建てられるし、商業施設も建てられるという地域でないといけません。

住居系の3つの用途地域は、住居系の用途地域の中でも、用途規制がゆるく住居も商業施設も建つような用途地域です。

また、近隣商業地域と準工業地域は、商業系や工業系の用途地域ですが、その性質上住宅の立地を予定している用途地域です。

次に、容積率が40/10、50/10という部分も重要です。容積率が400%、500%という地域は、最も夜にゴーストタウン化しやすい地域です。

先ほどの5つの用途地域内で、なおかつ400%、500%の容積率が指定されている地域で高層住居誘導地区が指定されるということです。

最後に、都心部にマンションを誘致するには、それなりに優遇しないといけません。どういうふうに優遇するかというと、高層住居誘導地区内でマンションを建てるのならば、そのマンションの容積率の最高限度、建築物の建ぺい率の最高限度及び建築物の敷地面積の最低限度を緩和してくれるということです。

8.高度地区

この高度地区というのは、分かりやすいと思います。読んで字のごとく建築物の「高度」つまり高さを制限する地区です。

まず、「用途地域内」というのがポイント。

次に、高さの最高限度又は最低限度を定めるということです。最高限度と最低限度のどちらかを定めるということで、最高限度と最低限度を同時に定めることはありません。

このうち、建築物の高さの「最高限度」を定めるのは、住環境を保護したりするためです。これは分かりやすいと思います。

これに対して、建築物の高さの「最低限度」を定めるというのは分かりにくいと思います。高さの最低限度を定めると、ある一定以上の高い建物ばかりが建ちます。低い建物は建てるな、という意味です。これはよくないような気がする人もいるかもしれませんが、土地の高度利用(有効利用)を図りたい市街地などでは、ある程度の高さ以上の建物を建てて土地の高度利用をしたいという地区もありますので、そのような地区に定めます。

なお、準都市計画区域内に高度地区を定める場合は、建築物の高さの最高限度しか定めることはできません。つまり、高さの最低限度を定めることはできません。これはちょっと考えれば分かると思いますが、準都市計画区域内で高さの最低限度を定めるということは、その地域を高度利用しなさい、ということになります。もともと準都市計画区域は、市街地の高度利用を図るような地域ではありません。

9.高度利用地区

この高度利用地区というのは、土地の高度利用(有効利用)を図る地区です。

ポイントは、まずは「用途地域内」です。これは覚えやすい。

次に、高度利用を図るために何が制限されているかです。これはちょっとややこしいので、一つずつ説明していきましょう。

建築物の容積率の最高限度及び最低限度…容積率の上限と下限を定め、この中に納めなさいということ。簡単にいえば大きすぎず、小さすぎない建物を建てて、土地の有効利用を図るということ。

建ぺい率の最高限度…敷地に対してある程度の余裕をもたせた建築物を建築させる

建築物の建築面積の最低限度…建築面積の最低限度ということですから、小さい建物は建てるな、という意味です。土地の有効利用という観点からは、小さいビルをいくつも建てるよりも、大きなビルをドンと建てた方が土地を有効利用できます。

壁面の位置の制限…ビルというのは外壁を揃えて建てた方が、見た目もいいし、土地も有効利用できるということです。建て並んでいるビルの外壁が、ビルごとにバラバラというのはよくありません。

10.特定街区

特定街区というのは、具体的には超高層ビル街などのこと。

建築基準法では、容積率や建築物の高さ等を規制していますが、このようなものを建築物の形態規制といいます。

このような建築基準法の規定をまともに適用していれば、超高層ビル街などは建てられません。そこで、容積率、高さ等の規制を緩和している地区のことです。

容積率や建築物の高さは、「最高限度」と書いてありますが、この最高限度を「緩和して」超高層ビルが建つようにしています。

11.風致地区・景観地区

風致地区については、景観地区と似ていて混乱しやすいものですので、景観地区もここで便宜上まとめて説明しましょう。

まず景観地区ですが、以前は美観地区といわれていたもので、法改正でこの景観地区に変わりました。ポイントは、「市街地」の景観を守る地域であるということです。

これに対して風致地区というのは、「都市の風致」を維持する地区です。「都市」という言葉に騙されやすいのかもしれませんが、「風致」ということですので、自然の美しさを残す地区です。

よく景観地区は人工美、風致地区は自然美を守る、というふうに言われます。