※この記事は一般的な条文解説で、宅建等の資格試験の範囲を超えた内容も含みます。当サイトの記事が読みやすいと感じた方は、当サイトと資格試験向け教材の関係をご覧下さい。

都市計画法8条(地域地区)

【解説】

1.地域地区とは

都市計画の内容では、この「地域地区」というのが数が多くて一番大変です。

この「地域地区」というのはどんな都市計画か?

前条の区域区分のところで都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に分けるという話をしました。

市街化調整区域は、建物は原則として建てずに、環境や農地の保全を行うところなので、それでいいんですが、市街化区域というのは建物を建てて開発していくところです。

しかし、建物を建ててどんどん開発していいからといって、どこにどんな建物でも自由に建ててよいというわけにはいきません。自由に建物を建てると、住宅の隣に工場が建ったりします。そこで、開発をするにあたってもう少し細かく土地の利用を決めていこうというのが「地域地区」です。

この地区計画は種類が多くて、第1項に定めたられたものがあります。

各々については、他の各条文で説明していくことになります。

なお、景観地区については第9条21項を参照して下さい。

2.地域地区~準都市計画区域で定めることができるもの

本条は、準都市計画区域について、都市計画で定めることができる地域地区の種類について規定されています。

この準都市計画区域というのは、都市計画区域外においてモータリゼーションの進展等により郊外部における開発行為及び建築行為が増加しています。都市計画区域外においても、建物等が建っていく地域が出てきたということです。しかし、ここは都市計画区域外ですから、都市計画などの制限がありません。このような状態を野放しにするのはよくないということです。そこで、準都市計画区域という区域を作って、この準都市計画区域においては、積極的な開発は行わず、土地利用の整序又は環境の保全を行うことを目的としています。したがって、準都市計画区域では、事業に関する都市計画は行われず、都市計画のうちでも「一部」の都市計画のみ行われます。

それでは、準都市計画区域において行われる一部の都市計画区域とはどういうものかについて規定されているのが本条です。
条文の準用でややこしいので、整理してみます。要するに、準都市計画区域には、以下の8つの地域又は地区のみ定めることができます。これらはすべて都市計画の中でも「地域地区」に該当するものです。

  1. 用途地域
  2. 特別用途地区
  3. 特定用途制限地域
  4. 高度地区
  5. 景観地区
  6. 風致地区
  7. 都市緑地法による緑地保全地域
  8. 文化財保護法による伝統的建造物群保存地区

まず、全般的な話からいうと、準都市計画区域においては、積極的な開発は行わず、土地利用の整序又は環境の保全を行うことを目的としているという観点から、この8つの地域地区が定められています。

具体的に、いくつか注意すべき点を述べると、まず④高度地区です。
これについては、本条第3項2号トで、高度地区については、「準都市計画区域内にあっては、建築物の高さの最高限度」を定めるものとされており、建築物の高さの「最低限度」の部分が外されています。
つまり、準都市計画区域においては、通常の高度地区と異なり、建築物の高さの「最高限度又は最低限度」を定めるというのではなく、建築物の高さの「最高限度」しか定めることができないということです。
これは、準都市計画区域の趣旨を考えてもらえば分かりますが、準都市計画区域というのは、積極的な開発は行わず、土地利用の整序又は環境の保全を行うことを目的としています。
他方、建築物の高さの「最低限度」を定めるというのは、一定の高さ以上の建築物しか建てられないという意味であり、市街地等で、土地の高度利用を図らなければならないような地域に定められるものです。
したがって、準都市計画区域で建築物の高さの最低限度を定め、「土地の高度利用を図れ!」というのは、おかしいということになります。

同様の考え方から、「高度地区」は定めることはできるが、「高度利用地区」は定めることはできないというのも覚えておいて下さい。「高度利用地区」は上記①~⑧から外されています。
高度利用地区は、土地の高度利用(有効利用)を図る地区だからです。

また、区域区分を定めることもできません。区域区分は、そもそも地域地区に該当しません。区域区分は、「都市計画区域」について市街化区域と市街化調整区域との区分を定めるもので(第7条1項)、準都市計画区域内に市街化区域のような開発を進める区域を定めることは、上記の趣旨からいって不都合だからです。

地区計画も、地域地区ではない以上、準都市計画区域において定めることはできません。

さらに、市街地開発事業のような事業に関する都市計画は行われません。市街地開発事業は、市街化区域又は区域区分が定められていない「都市計画区域内」において、一体的に開発し、又は整備する必要がある土地の区域について定めるものであり(第13条1項12号)、やはり積極的な開発は行わないという準都市計画区域の趣旨に反します。

なお、本条項の最後の「できる」というのは確認しておいて下さい。あくまでこれらの地域又は地区を定めることができるだけで、「定めなければならない」わけではありません。

3.用途地域について都市計画で定める事項

用途地域に関して、「用途地域について都市計画で定める事項」というのを説明しておきましょう。

これは、試験などで意外に出題されますが、しっかり理解していない人が多いので、差が付く問題といえるかもしれません。

「用途地域について都市計画で定める事項」というのは、ある地域にある用途地域を指定する場合、都市計画として何を定めておくのか、ということです。

たとえば、ある地域を第一種住居地域にしたとします。そのときに、その第一種住居地域の場所を指定するのは当然ですが、その場所を指定するときに容積率も同時に決めておきなさい、というような決まりがあるんですね。

これは条文そのままだと分かりにくいので、表の形で載せておきましょう。内容的には建築基準法で勉強する内容が大半ですから、内容については、建築基準法の説明で触れることになります。