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都市計画法5条(都市計画区域)

【解説】

1.都市計画区域の指定

都市計画というのは、日本中を隅から隅まで行うということはしません。都市計画を実行するには予算もかかりますし、人が住んでいないような原野などで都市計画を行っても意味がありません。

そこで、計画的な街づくりが必要な土地を都市計画区域という形で指定します。

このような都市計画区域は日本中にいっぱいあります。そして、この都市計画区域内で都市計画の内容を実行します。したがって、都市計画区域というのは都市計画を行うための区域と考えてもらえばいいわけです。

2.都市計画区域の指定権者~都道府県(第1項、第3項)

それでは、この都市計画区域は誰が指定するのか。これはそんなに難しい話ではありません。大きく一の都道府県に指定する場合と、二以上の都府県にわたって指定する場合にわけて下さい。

一の都道府県に指定する場合は非常に簡単。都道府県が指定します(第1項)。

そして、二以上の都府県にわたって指定する場合、都道府県で対応できませんので、国土交通大臣が指定します(第4項)。

まず、都道府県が指定する場合から見ていきますが、都道府県は、「市又は人口、就業者数その他の事項が政令で定める要件に該当する町村の中心の市街地を含み、かつ、自然的及び社会的条件並びに人口、土地利用、交通量その他国土交通省令で定める事項に関する現況及び推移を勘案して、一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域」を都市計画区域として指定します。

また、この都市計画区域の指定は、都市計画区域は、市町村のような行政区画にかかわらず指定される、という点もたまに出題されますので確認しておいて下さい。

そして、この指定の際の細かい手続をみましょう。この手続というのは、都市計画法を勉強する際には避けて通れないものです。面倒な感じがするかもしれませんが、ここはキーワードに着目して、流れを確認するという感じで勉強すればそんなにややこしいものではありません。

この都道府県による都市計画区域の指定には、「あらかじめ、関係市町村及び都道府県都市計画審議会の意見を聴く」とともに、「国土交通大臣に協議し、その同意を得なければならない」ということになります。

つまり、「関係市町村及び都道府県都市計画審議会の意見」+「国土交通大臣に協議・同意」です。

ここでこれから都市計画法で手続等を学んでいく上で、役立つ考え方と知識を説明しておきましょう。

まず、よく「地方公共団体」「都道府県」「市町村」というのが出てきますが、その関係は上図のようになっています。

日本の地方自治制度は、都道府県と市町村の2段階になっていますので、単に地方公共団体と表現されているときは、都道府県と市町村の両方を指します。

片一方だけのときは、それぞれ「都道府県」「市町村」と表現されるわけです。

次に、よく「~大臣」というのも許可権者などで出てきますので、この関係も簡単なことですが意識していれば、頭が整理されてきます。

序列でいうと、当然大臣>都道府県(知事)>市町村(長)となるわけですね。

したがって、この都道府県が都市計画区域を指定する場合でも、都道府県より上の国土交通大臣には「同意」という形の重いものが要求され、都道府県より下の市町村は「意見」を聞くだけでいい、というふうになっているわけです。

この考え方はここだけではありませんので、これを意識しているだけで随分楽に感じるでしょう。

3.都市計画区域の指定権者~国土交通大臣(第4項)

国土交通大臣が都市計画区域を指定するのは、「二以上の都府県の区域にわたる」場合です。

この場合、国土交通大臣は、「関係都府県の意見」を聴いて都市計画区域を指定するものとされ、関係都府県が意見を述べようとするときは、あらかじめ、「関係市町村及び都道府県都市計画審議会の意見」を聴かなければならないとされています。

国土交通大臣から見れば、「都府県」は自分よりも下位ですから「意見」、都府県から見て「市町村」は自分より下位ですから、「意見」を聞くという形になっているわけです。

ちなみに、ここでは「都道府県」ではなく、「都府県」となっており、「道」が抜けていますが、これは実際上、北海道と他の都府県にまたがる都市計画区域は存在しないということからこういう表現になっているだけです。

4.都市計画区域の変更又は廃止(第6項)

以上みてきた、都道府県及び国土交通大臣の都市計画区域の指定手続は、都市計画区域の変更又は廃止について準用されていますので、同様の手続がとられます。