建替え円滑化法80条(施行マンション等の明渡し)
第80条 施行者は、権利変換期日後マンション建替事業に係る工事のため必要があるときは、施行マンション又はその敷地(隣接施行敷地を含む。)を占有している者に対し、期限を定めて、その明渡しを求めることができる。
2 前項の規定による明渡しの期限は、同項の請求をした日の翌日から起算して30日を経過した後の日でなければならない。
3 第58条第3項の規定は、同項の相当の期限を許与された区分所有者に対する第1項の規定による明渡しの期限について準用する。
4 第1項の規定による明渡しの請求があった者は、明渡しの期限までに、施行者に明け渡さなければならない。ただし、第75条の補償金の支払を受けるべき者について同条の規定による支払若しくは第76条の規定による供託がないとき、第15条第1項(第34条第4項において準用する場合を含む。)若しくは第64条第1項(第66条において準用する場合を含む。)若しくは区分所有法第63条第4項(区分所有法第70条第4項において準用する場合を含む。)の規定による請求を受けた者について当該請求を行った者による代金の支払若しくは提供がないとき、又は第64条第3項(第66条において準用する場合を含む。)の規定による請求を行った者について当該請求を受けた者による代金の支払若しくは提供がないときは、この限りでない。
【解説】
施行マンションの占有者は、権利変換期日に直ちに立ち退く必要はなく、施行者が通知した明渡しの期限までは、従前の用法に従い、その占有を継続することができます(第79条)。その占有者に対して施行者が、明渡し期限を定めて、明渡しを求めることができる旨を規定しています(第1項)。
この施行者が占有者に通知する明渡し期限は、占有者が明渡しの準備に要する期間を考慮して、明渡しの請求をした日の翌日から起算して30日を経過した後の日である必要があります(第2項)。
なお、この占有者の明渡しの規定は、第58条3項の規定が準用されているので、区分所有法63条5項及び同法70条4項により建替え決議において売渡し請求権が行使された場合、団地内建物の一括建替え決議において売渡し請求権が行使された場合に、裁判所が建物の明渡しにつき相当の期限を許与したときにも準用されます(第3項)。
以上より、施行マンションの占有者は、明渡し期日までに明渡す必要があるが、占有者が補償金の支払いを受けることができる場合であれば、この補償金の支払いと施行マンションの明渡しは同時履行の関係にあり、補償金の支払いがあるまでは分け渡す必要がない(第4項)。