建替え円滑化法55条(権利変換手続開始の登記)

第55条 施行者は、次に掲げる公告があったときは、遅滞なく、登記所に、施行マンションの区分所有権及び敷地利用権(既登記のものに限る。)並びに隣接施行敷地の所有権及び借地権(既登記のものに限る。)について、権利変換手続開始の登記を申請しなければならない。
一 組合が施行するマンション建替事業にあっては、第14条第1項の公告又は新たな施行マンションの追加に係る事業計画の変更の認可の公告
二 個人施行者が施行するマンション建替事業にあっては、その施行についての認可の公告又は新たな施行マンションの追加に係る事業計画の変更の認可の公告

2 前項の登記があった後においては、当該登記に係る施行マンションの区分所有権若しくは敷地利用権を有する者(組合が施行するマンション建替事業にあっては、組合員に限る。)又は当該登記に係る隣接施行敷地の所有権若しくは借地権を有する者は、これらの権利を処分するときは、国土交通省令で定めるところにより、施行者の承認を得なければならない。

3 施行者は、事業の遂行に重大な支障が生ずることその他正当な理由がなければ、前項の承認を拒むことができない。

4 第2項の承認を得ないでした処分は、施行者に対抗することができない。

5 権利変換期日前において第38条第6項、前条第3項において準用する第49条第1項又は第99条第3項の公告があったときは、施行者(組合にあっては、その清算人)は、遅滞なく、登記所に、権利変換手続開始の登記の抹消を申請しなければならない。

【解説】

1.権利変換手続

権利変換手続の意義については、第1条を参照して下さい。

マンション建替事業における権利変換手続では、施行マンションの区分所有権及び敷地利用権を有する区分所有者は、そのまま施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権を取得します。

そして、それに伴って、区分所有権及び敷地利用権に設定されていた抵当権等の担保権は、施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権にそのまま移行します。

また、施行マンションの区分所有権に設定されていた借家権も、そのまま施行再建マンションに移行します。

なお、権利変換手続により施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権を希望しない区分所有者は、補償金を受領して施行マンションの区分所有権及び敷地利用権を失い、施行者がその区分所有権及び敷地利用権を取得することになります。

2.権利変換手続開始の登記

本条は、建替事業の事業計画が確定した旨の公告(第14条1項)等があった場合の権利変換手続開始の登記について規定されています。

建替事業の事業計画が確定した旨の公告は、関係権利者等に対して、事業計画が確定したことを知らせるために行われます。この公告があれば、マンション建替事業が開始され、それに伴い権利変換手続も開始されます。この権利変換手続が開始されると、施行マンションの区分所有等は、原則として権利の変換を受けることが確定します。

そして、この権利変換手続の開始を第三者に公示して取引の安全を図るため遅滞なく登記をする必要があります。

この登記がなされると、施行マンションの区分所有権や敷地利用権を有する者、又は隣接施行敷地の所有権や借地権を有する者が、これらの権利を売却するなどの処分をするときは、施行者の承認を得る必要があります(第2項)。この承認を得ないでした処分は、施行者に対抗することができません(第4項)。ただ、この承認を得ない処分は、施行者に対抗することができないだけで、当事者間では有効とされます。

この処分の承認を求められた施行者は、事業の遂行に重大な支障が生ずることその他正当な理由がなければ、承認を拒むことができません(第3項)。これは、権利変換手続開始後の区分所有者等の処分を一切禁止することはできないものの、権利変換手続開始後の処分に合わせていちいち権利変換計画を変更したのでは、建替事業の円滑な遂行ができなくなるからです。

この権利変換手続開始の登記は、建替事業を円滑に行うためのものですから、建替事業の廃止等がなされたときは、その登記を抹消する必要があります(第5項)。

具体的には以下の事由が発生したときに登記の抹消を行います。

①都道府県知事等が、組合の設立についての認可を取り消したとき、又は解散の認可をしたとき(第38条6項)
②個人施行におけるマンション建替事業の廃止及び終了の公告(第54条3項、49条1項)
③個人施行における認可の取消の公告(第99条3項)