建替え円滑化法2条(定義等)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 マンション 二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるものをいう。
二 マンションの建替え 現に存する一又は二以上のマンションを除却するとともに、当該マンションの敷地(これに隣接する土地を含む。)にマンションを新たに建築することをいう。
三 再建マンション マンションの建替えにより新たに建築されたマンションをいう。
四 マンション建替事業 この法律(第3章を除く。)で定めるところに従って行われるマンションの建替えに関する事業及びこれに附帯する事業をいう。
五 施行者 マンション建替事業を施行する者をいう。
六 施行マンション マンション建替事業を施行する現に存するマンションをいう。
七 施行再建マンション マンション建替事業の施行により建築された再建マンションをいう。
八 マンション敷地売却 現に存するマンション及びその敷地(マンションの敷地利用権が借地権であるときは、その借地権)を売却することをいう。
九 マンション敷地売却事業 この法律で定めるところに従って行われるマンション敷地売却に関する事業をいう。
十 売却マンション マンション敷地売却事業を実施する現に存するマンションをいう。
十一 区分所有権 建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)第2条第1項に規定する区分所有権をいう。
十二 区分所有者 区分所有法第2条第2項に規定する区分所有者をいう。
十三 専有部分 区分所有法第2条第3項に規定する専有部分をいう。
十四 共用部分 区分所有法第2条第4項に規定する共用部分をいう。
十五 マンションの敷地 マンションが所在する土地及び区分所有法第5条第1項の規定によりマンションの敷地とされた土地をいう。
十六 敷地利用権 区分所有法第2条第6項に規定する敷地利用権をいう。
十七 借地権 建物の所有を目的とする地上権及び賃借権をいう。ただし、臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。
十八 借家権 建物の賃借権をいう。ただし、一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。
2 区分所有法第70条第1項に規定する一括建替え決議(以下単に「一括建替え決議」という。)の内容により、区分所有法第69条第1項に規定する団地内建物(その全部又は一部がマンションであるものに限る。以下「団地内建物」という。)の全部を除却するとともに、区分所有法第70条第1項に規定する再建団地内敷地に同条第3項第2号に規定する再建団地内建物(その全部又は一部がマンションであるものに限る。以下この項において「再建団地内建物」という。)を新たに建築する場合には、現に存する団地内建物(マンションを除く。)及び新たに建築された再建団地内建物(マンションを除く。)については、マンションとみなして、この法律を適用する。
【解説】
本条は、マンション建替え円滑化法で用いられる用語の定義を定めています。
(1) マンション(第1号)
マンションは、区分所有法、マンション管理適正化法等でいろいろに定義されていますが、本法においては、まず「二以上の区分所有者が存する」ことが要件とされています。つまり、専有部分の数ではなく、区分所有者の数で定義しています。したがって、二以上の専有部分が存在したとしても、一人の区分所有者が専有部分の全部を所有している場合は、「マンション」には該当しません。
これは当然でしょう、二以上の専有部分があったとしても、区分所有者が一人であれば、その区分所有者が自由に建替えを行えばよいのであり、本法のような特別法を必要としないからです。
次に、「人の居住の用に供する専有部分のあるもの」であることが必要です。したがって、一つでも居住用の専有部分があれば、他の部分が店舗、事務所等の用に供するものであっても、「マンション」に該当します。
(2) マンションの建替え(第2号)
そもそも、建替えというのは、現に存する建物を取り壊して(除却して)、新たな建物を建てることです。
本号も基本的にはそのような定義になっていますが、除却するマンションについて「二以上の」としているのは、団地型のマンションを一体として建替える場合を視野に入れているからです。
また、マンションの敷地について、「これに隣接する土地を含む」としたのは、平成14年の区分所有法の改正により、建替え後のマンションの敷地について厳格な敷地の同一性は要求されず、新たな再建建物の敷地が、従前建物の敷地と一部でも重なっている土地であれば、建替えをすることができるように改正されたからです。
(3) 再建マンション(第3号)、施行再建マンション(第7号)
この再建マンションの定義は、普通に建替え後のマンションという意味です。
ちょっと考えるのは、第7号に「施行再建マンション」という似たような言葉があることです。
第7号の施行再建マンションは、「マンション建替事業の施行」により建築された「再建マンション」を指します。したがって、第3号の再建マンションは、一般的に建替え後のマンションを意味するもので、第7号の規定の前提としての定義ということになります。
(4) マンション建替事業(第4号)
この定義は、特に難しい点はないと思います。本法に従って行う建替事業のことを「マンション建替事業」と定義しているだけの話です。
ちなみに、区分所有法では、専有部分がすべて居住用以外でも区分所有建物となりますので、区分所有法上の建替えは、このような区分所有建物の建替えも含まれますが、本法の「マンション」は「人の居住の用に供する専有部分のあるもの」をいうので、区分所有法の建替え決議がなされた区分所有建物のうち、「マンション」についての建替事業を指します。
(5) 施行者(第5号)
この定義も問題はないと思います。施行者とは、マンション建替事業を施行する者です。具体的には第2章(マンション建替事業)の第1節(施行者)に規定されています。
(6) 施行マンション(第6号)
施行マンションとは、マンション建替事業を施行する現に存するマンション、つまり取り壊すマンションを指します。
(7) 区分所有権(第11号)、区分所有者(第12号)、専有部分(第13号)、共用部分(第14号)、マンションの敷地(第15号)、敷地利用権(第16号)
これらの用語の定義は基本的に区分所有法の規定に従っています。
(8) 借地権(第17条)、借家権(第18号)
これは、借地借家法の規定と同様の定義になっています。いずれも一時使用のものは除かれていますが、これはマンション建替事業においては一時使用の借地権や借家権は、権利変換の対象とする必要はないと判断されたからです。
(9) 一括建替え決議の特例(第2項)
区分所有法70条において、団地内建物につき一括して、その全部を取り壊し、かつ、再建団地内敷地に新たに建物を建築する旨の決議(一括建替え決議)をすることができます。
しかし、本法のマンションの定義(専有部分の一つは居住用であることが必要)、区分所有法の区分所有建物の定義は異なりますので、一括建替え決議を行う場合に、一つでも本法のマンションの定義に該当しない区分所有建物があったり、再建団地内建物の一部に「マンション」でないものが含まれている場合には、本法が適用されず、建替事業を施行することができなくなるおそれがあります。
そこで、団地内建物の中に「マンション」に該当しないものがあっても、一部でも「マンション」であれば、また、再建団地内建物に「マンション」に該当しないものがあっても、一部でも「マンション」であれば、本法の規定が適用され、建替事業を施行することができることにしたのが本条です。