建替え円滑化法1条(目的)
第1条 この法律は、マンション建替事業、除却する必要のあるマンションに係る特別の措置及びマンション敷地売却事業について定めることにより、マンションにおける良好な居住環境の確保並びに地震によるマンションの倒壊その他の被害からの国民の生命、身体及び財産の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
【解説】
建替え円滑化法の全体の流れ
区分所有法の建替え決議 | |
↓ | ・事業計画、定款の作成(9) ・都道府県知事等の認可の申請(9) ・都道府県知事等は、事業計画を2週間公衆の縦覧(11Ⅰ)←意見書(11Ⅱ) |
マンション建替組合の設立 | ・都道府県知事等の認可=組合成立(13) ・公告=対抗要件(登記制度なし)(14Ⅱ) ・図書の縦覧(14Ⅲ) |
↓ | ・売渡し請求権(公告から2月以内+建替え決議から1年以内)(15) ・権利変換を希望しない旨の申出等…区分所有権者・借家権者は、組合設立認可等の公告日から30日以内に権利変換を希望しない旨の申出等(56)をすることにより、建替えに参加しないことができる(円56条)。→組合による建替え不参加者からの権利の買取り(75) |
権利変換計画の作成 | cf.権利変換処分は、土地区画整理法でいうと換地処分のこと |
↓ | ・都道府県知事の認可(57) ・組合による計画不同意者からの権利の買取り等(64) |
権利変換の開始 | |
↓ | ・権利変換手続開始の登記(55Ⅰ)→区分所有者等の権利の処分に施行者の承認(55Ⅱ) ・敷地…権利権利変換期日に施行マンションの敷地利用権は失われ、施行再建マンションの敷地利用権は新たにその敷地利用権を与えられるべき者が取得(70)→施行者による登記の一括申請(74、93) ・施行マンション…権利権利変換期日に施行者に帰属+区分所有権以外の権利は消滅(71Ⅰ)→施行者が施行マンションを取壊し→建替工事に着手 ・担保権等…権利変換期日以後は、施行再建マンションの区分所有権等の上に存する(73) 高齢者等の居住安定のための措置 |
建替工事の実施 | |
↓ | |
建築工事完了の公告(81) | |
↓ | ・建築工事完了の公告の日に、区分所有権・借家権を取得(71) ・施行再建マンション及び施行再建マンションに関する権利について登記の一括申請(82) |
再建マンションへの入居 |
区分所有法においてマンションの建替え決議が認められていますが、この建替え決議を行ったとしても、実際には様々な問題があるため、マンションの建替えは非常に困難なものになっていました。
具体的には、マンション建替事業は、区分所有者が共同して行っても、それは法人格のない任意の団体にすぎないので、法的な位置付けがはっきりせず、社会的な信用もありません。したがって、内部的な意思決定の方法などの問題が生じるだけでなく、対外的にも銀行から融資を受けたり、建設会社と建築請負契約などを行うことも困難でした。
また、マンションの建替えは、一旦従来のマンションを取壊しますので、そのマンションに設定されていたい賃借権や抵当権などを一旦外すために、個々の借家人や抵当権者の同意を得る必要があります。そして、再建マンションにそれらの権利を移行することになりますが、これらを個々の権利者ごとに行うことになれば、一人でもこの処理がうまくいかなければ建替事業そのものに支障が出ます。
そこで、本法で、マンション建替事業について都道府県知事の認可を受けて設立されるマンション建替組合を事業主体として法人格を与え法的に位置付けを明確にした上で、権利の移行については再開発事業の手法を取り入れ、従来の権利を一括して再建マンションに移行できるようにしました(権利変換手続)。