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宅建業法78条(適用の除外)

【解説】

1.国・地方公共団体の適用除外(第1項)

宅地建物取引業を行うには、宅地建物取引業の免許が必要であるが、例外的に宅地建物取引業の免許がなくても、宅地建物取引業を行うことができる場合があります。

その一つとして、国・地方公共団体の場合を規定しているのが本条です。

そして、国とみなされる都市再生機構や、地方公共団体とみなされる地方住宅供給公社なども、宅地建物取引業の免許は不要です。

気を付けて欲しいのは、この国や地方公共団体等は、信託会社等と異なり、免許に関する規定だけではなく、免許以外の宅地建物取引業法の規定も適用されません。要するに全面的に宅地建物取引業法の規定が適用されないわけです。

さらに、本条の意味は、「国・地方公共団体等」自身には宅地建物取引業の適用がないという意味であって、「国・地方公共団体等」を相手に取引する者や「国・地方公共団体等」から依頼を受けた者は、普通に宅地建物取引業法が適用されます。

2.宅地建物取引業者相互間の取引についての適用除外(第2項)

(1) 自ら売主の制限

この「自ら売主の制限」とは、何かということですが、宅建業法の最初の宅地建物取引業の定義のところで話をしましたが、宅地建物取引業というのは、「自ら売買・交換」「売買・交換・貸借の代理」「売買・交換・貸借の媒介」でした。

この「自ら売買・交換」の中の、「自ら売買」の中の、特に宅地建物取引業者が「自ら売主」になる場合には、他の取引態様と異なり特別に8つの規制が加えられています。

なぜこの「自ら売主」のときだけ、他の取引態様と異なり規制が厳しくなっているのでしょうか。たとえば、宅地建物取引業者Aが自ら売主となって、宅地建物取引業者でないBに不動産を売却するとします。

このように売主が宅地建物取引業者で、買主が宅地建物取引業者でない普通の人の場合は、売主の宅地建物取引業者は日々不動産の取引を行っているので、専門的な知識やノウハウがあるのに対し、買主は一般の人ですから、そのような知識やノウハウがない。

このように売買契約の当事者間に知識やノウハウの差があると、宅地建物取引業者が一般消費者の犠牲のもとに自分の利益を図る可能性があり、一般消費者にとって大変危険な取引になるかもしれません。

そこで、宅地建物取引業者が自ら売主で、買主が宅地建物取引業者でない場合は、通常の取引態様の場合の規制に加えて、8つ特別の規制がなされています。

この「自ら売主の制限」は、具体的には以下の8つになります。

  1. 自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限
  2. クーリング・オフ
  3. 損害賠償額の予定等の制限
  4. 手付の額の制限等
  5. 瑕疵担保責任についての特約の制限
  6. 手付金等の保全措置
  7. 割賦販売の契約の解除等の制限
  8. 所有権留保等の禁止

(2) 宅地建物取引業者相互間の取引についての適用除外(第2項)

以上の説明で分かりますように、宅地建物取引業者が「自ら売主」となる場合の制限については、宅地建物取引業者相互間の取引には適用がなく、宅地建物取引業者が自ら売主で、買主が宅地建物取引業者でない場合にのみ適用があるということになります。

本条は、そのことを規定した条文です。

宅地建物取引業法第33条の2及び第37条の2から第43条までの規定というのは、先ほど挙げた宅地建物取引業者自ら売主の制限の8つのことです。

そして、本項は裏を返せば、「自ら売主の制限」以外の宅地建物取引業法の規定は、原則として宅地建物取引業者相互間の取引にも適用されるということを意味しています。

つまり、宅地建物取引業法の規定は、基本的に宅地建物取引業者相互間の取引にも適用されますが、この自ら売主の8つの制限は、宅地建物取引業者相互間の取引には適用されません。

なお、宅地建物取引業者相互間の取引において、宅建業法の規定の適用がないのは、この自ら売主の8つの制限の他に、宅地建物取引業者は営業保証金・弁済業務保証金の還付を受けられない(したがって、宅地建物取引業者に対しては供託所等に関する説明も不要)、宅地建物取引業者に対しては重要事項の説明は不要(重要事項の説明書の交付は必要)というのがあります。