監督処分
【解説】
1.監督処分の種類
監督処分については、まずその種類を覚えて下さい。これがすべての始まりです。
上図を見て下さい。まず、監督処分については、大きく宅地建物取引業者に対する監督処分と、宅地建物取引士に対する監督処分に分かれます。
2.宅地建物取引業者に対する監督処分
そして、宅地建物取引業者に対する監督処分は、指示処分、業務停止処分、免許取消処分の3つに分かれます。
まず、指示処分ですが、これは免許権者等が「宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。」というもので、監督処分としては一番軽いものです。
次は、業務停止処分ですが、これは前にも出てきたと思いますが、免許権者等が「宅地建物取引業者に対し、1年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。」というものです。
この「1年」というのは覚えておいた方がいいです。あまりに長期の業務停止処分は、事実上免許取消処分と同じになります。
また、「一部」の業務停止も可能ですので、不正をした支店での営業を禁止するというのも可能です。
具体的に業務の停止というのは、宅地建物取引に関する業務を停止することで、宅地建物の販売分譲、媒介、代理を行うことができないだけでなく、業務に関する広告を行うこともできないことになります。
免許取消処分は、免許を取り上げられてしまうことです。
3.宅地建物取引士に対する監督処分
次に、宅地建物取引士に対する監督処分ですが、指示処分、事務禁止処分、登録消除処分の3つがあります。
これは宅地建物取引業者に対する監督処分と対応するものです。以下のように対応します。
指示処分=指示処分
業務停止処分=事務禁止処分
免許取消処分=登録消除処分
まず、指示処分は、宅地建物取引業者の場合と同じです。
事務禁止処分は、前にも説明したと思いますが、宅地建物取引士としての事務(仕事、重要事項の説明が重要な事務になる)が一定期間できなくなります。
これも「1年」以内で事務禁止の期間が定められることになります。
最後は登録消除処分ですが、これは宅地建物取引士としての登録が消される(消除)ということですので、当然宅地建物取引士証も効力がなくなり、宅地建物取引士としての資格を失わせるということです。
ちなみに、宅地建物取引士の登録をしているが、宅地建物取引士証の交付を受けていない者(これを宅地建物取引士資格者といいます。)も、登録はしているので、この「登録消除処分」を受けることがあります。
4.監督処分の処分権者
次に、監督処分の処分権者というのを覚えて下さい。これは絶対に覚えて下さい。
宅地建物取引業者に対する監督処分ですが、指示処分と業務停止処分は、免許権者だけでなく、業務を行った地の都道府県知事もこれらの処分をすることができます。
たとえば、A県知事の免許を有している宅地建物取引業者が、B県で業務を行った際に不正な行為をしたとします。一旦免許を取得すれば、全国で営業できますので、このようなことは当然あり得ます。
この場合は、A県知事だけでなく、B県知事も業務停止処分を行うことができます。
これは、免許権者のみしか指示処分ができないとすると、免許権者でない都道府県知事は、宅地建物取引業者が自分の都道府県内でいかなる不正行為を行っても、免許権者が行うであろう指示処分を期待するしかないことになります。
また、免許権者としても、免許を与えた宅地建物取引業者の業務を行う場所によっては、必ずしも監督の目が十分行き届くわけではないからです。
これに対して、免許取消処分は、免許権者のみが処分権者となり、業務を行った地の都道府県知事は免許取消処分を行うことはできません。
これは、免許を与えた者だけが、免許を取り消すことができると考えてもらえばいいと思います。
そして、宅地建物取引士に対する監督処分も同様の考え方です。
つまり、指示処分と事務禁止処分は、登録している都道府県知事だけでなく、業務を行った地の都道府県知事もこれらの監督処分を行うことができます。
しかし、登録消除処分だけは、登録している都道府県知事しか行うことはできません。
5.監督処分の処分事由(概説)
監督処分の種類、処分権者を説明しましたが、問題なのは、どういう場合にこの監督処分を受けるのかという処分事由です。
要するにこれがややこしいので、この監督処分を勉強するのが大変なわけです。極端に言えば、宅地建物取引業法にたくさん条文がありますが、すべての条文について、これに違反した場合はどの監督処分を受けるのか、あるいは受けないのかが問題になります。試験などでは、処分を受けない場合というのも出題されるので、結局はすべての条文について問題になるわけです。
したがって、ここは個別には丹念に条文を拾って勉強していくしかないことになります。
そこで、ここではその処分事由の概要についてだけ説明しておきます。
まず、宅地建物取引業者に対する指示処分事由ですが、これは「すべての宅地建物取引業法違反」と覚えて下さい。宅地建物取引業法に違反すると、それは最低でも一番軽い処分である指示処分は受けるということです。
次に、業務停止処分事由ですが、これは「ほとんどの宅地建物取引業法違反が含まれる」と覚えて下さい。宅地建物取引業法でわれわれが勉強するような重要な規定というのは、この業務停止処分事由の中にほとんど含まれています。まれに、重要な条文のように思えるのに、業務停止処分事由にならないものもありますが、非常に少ない。
次に、免許取消処分事由ですが、これは宅地建物取引業法の最初の方で「免許の基準」というのを勉強しましたが、そのときにも説明しましたように、免許の基準と免許取消処分事由は重なり合う部分が多いので、免許の基準に該当するものは、ほとんど免許取消処分事由になると覚えて下さい。これでかなりの部分をカヴァーできます
それともう一つ、業務停止処分事由というのを先ほど説明しましたが、業務停止処分事由というのは、「情状が重いとき」は同時に免許取消処分事由に該当します。したがって、宅地建物取引業法の重要な条文に違反して、それが情状が重ければ、免許取消処分になる可能性があるということです。