宅建業法64条の8(弁済業務保証金の還付等)
【解説】
1.弁済業務保証金の還付
弁済業務保証金の還付については、基本的に営業保証金で勉強したことがそのままあてはまります。
還付を受けることができる金額は、「当該社員が社員でないとしたならばその者が供託すべき営業保証金の額に相当する額」ということになりますので、本店1,000万円、支店ごとに500万円の合計額ですね。
ポイントを復習を兼ねて指摘しますと、
1.宅地建物取引業に関する取引であること
2.社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をした者(宅建業者を除く)を含む
3.営業保証金の額に相当する額の範囲内(全額弁済を受けるられるとは限らない)
このうち、2.については弁済業務保証金固有の問題ですので、説明しましょう。
営業保証金を供託して宅地建物取引業者を始めた者が、保証協会に加入して弁済業務保証金に切り替えたとしましょう。この宅地建物取引業者が、「営業保証金」で宅地建物取引業をしていたときに発生した債権を有する者は、「弁済業務保証金」から還付を受けることができるか?という問題があります。
これについては、保証協会としては、そのような還付は断る、ということも理論的には可能ではないかと思います。しかし、保証協会は親切で、そのような還付も応じてくれます。
つまり、「社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をした者を含」めて還付を行ってくれるんですね。
営業保証金の取戻しのところで勉強しますが、保証協会の社員となった場合は、営業保証金は取り戻すことができます。そのときには、「権利を有する者に対し一定期間内に申し出るべき旨の公告」は不要になります。
それは、ここと関連しています。つまり、保証協会は、当該宅地建物取引業者が社員になる前に取引した者に対しても還付してくれるので、保証協会の社員となって、すぐに営業保証金を取り戻したとしても、社員になる前に取引した者は、還付を受け損ねることはないのです。したがって、公告は不要、となるわけです。
2.保証協会の認証(第2項)
さて、次の話です。還付の権利を有する者がその権利を実行しようとするときは、弁済を受けることができる額について当該宅地建物取引業保証協会の認証を受けなければならないことになっています(第2項)。
ここに出てくる「認証」というのは、債権の存在や額を確認してくれる手続です。
そしてポイントは、その認証は「保証協会」がするという点です。免許権者である都道府県知事や国土交通大臣が認証するわけではありません。
また、宅地建物取引業者に対して債権を有する者が複数いる場合には、この保証協会の認証というのは、認証申出書の受理の順序に従って行うことになります。債権発生の順序がどうであろうと、申出書の受理の順序によるということです。
最後に、この認証に関連して気をつけて欲しいのは、還付請求をするのは、供託所に対して行うという点です。つまり、保証協会の認証を受けた上で、供託所に対して還付請求を行うということです。
3.弁済業務保証金の供託(第3項)
還付がなされた場合は、営業保証金の場合と同様に、その不足を宅地建物取引業者に補ってもらわないと困ります。
そこで、保証協会は、権利の実行(還付)があった場合においては、国土交通大臣から還付がなされた旨の通知を受け取った日から2週間以内に、その権利の実行により還付された弁済業務保証金の額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければならないことになります。
その後、保証協会は還付充当金の納付という形で、宅地建物取引業者からこの供託分を納付させることになりますが、その条文は第64条の10になりますので、そちらに解説を譲ります。
→第64条の10参照