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宅建業法50条(標識の掲示等)

【解説】

1.標識の掲示

この「標識の掲示」というのは、簡単にいえば事務所や案内所に宅地建物取引業者の標識を掲げなさい、という規制です。

この「標識の掲示」の規定は、宅地建物取引業者が免許を受けたものであることを明示して、一般の取引の関係者等が宅地建物取引業者を選択するための一助とし、またいわゆるモグリの営業を防止し、監督の徹底を期するために設けられたものです。

この第50条は、第1項でこの「標識の掲示」について規定されていますが、それ以外にも第2項で案内所などは、免許権者等に届け出しなさい、という規定もあります。

ここの勉強のポイントは、標識を掲げる場所や、届出が必要な場所を覚えることになります。しかし、専任の宅地建物取引士の設置義務のある場所などをしっかり覚えていれば、その知識をフルに生かせば、非常に効率的に勉強できます。

ここでは、第1項の「標識の掲示」について説明します。

第1項は、「宅地建物取引業者は、事務所等及び事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所ごとに、公衆の見やすい場所に、標識を掲げなければならない。」と規定しています。

これは、今まで勉強した知識を使えば、覚えることは意外に少ない点ですが、仕組みを理解してもらうのがちょっとややこしいので、下図を見て下さい。

今まで、「事務所等」などといって勉強してきたのは、専任の宅地建物取引士の設置義務のある場所、クーリング・オフできなくなる場所です。

そして、今から「標識の掲示」が必要な場所と、「届出」が必要な場所というのを勉強します。これら4つの中で場所として一番広いというのか多いのが、標識の掲示が必要な場所です。

その場所が上図です。ここで、問題になる場所がすべて記載されているわけです。ということで、標識の掲示が必要な場所を説明していきます。

標識の掲示が必要なのは、先ほどの条文にも出てきましたように、「事務所等及び事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所」ということになります。分かりにくい表現ですが、場所としては以下の3つです。

  1. 事務所
  2. 事務所「等」
  3. 事務所等「以外」の国土交通省令で定める場所

1.の「事務所」は3つで、上図の一番左の縦列です。

2.の事務所「等」は、クーリング・オフで出てきた場所で、上図の真中の縦列です。ただ、気を付けてほしいのは、クーリング・オフのときには「土地に定着する」というのが出てきたと思いますが、ここではそれは関係ありません。土地に定着しない、たとえばテント張りの案内所でも標識の掲示は必要です。「土地に定着する」というのは、クーリング・オフ固有の話と思っていただければいいです。

次に、3.の事務所等「以外」の場所ですが、これは今回初めて出てきて、そして「標識の掲示」にだけ要求されている場所です。それが上図の一番右の縦列に出てくるものです。

しかし、これは①③④⑤というのは、事務所「等」と言葉にすると全く同じ場所です。違いは、事務所「等」というのは、専任の宅地建物取引士の設置義務のある場所で、クーリング・オフできなくなる場所ですが、それらの場所は「契約締結等を予定」している場所でしたよね。

つまり、案内所等でも単にパンフレットなどを置いているだけの案内所等ではなく、契約などを予定している案内所等には、専任の宅地建物取引士を設置しないといけないし、それで契約締結等をすればクーリング・オフできなくなりました。

それらの場所に標識の掲示が必要なのは当然ですが、それだけではなく単にパンフレットなどを置いていて契約を締結しないような案内所等でも、標識の掲示だけは必要になるという意味です。

つまり、事務所「等」と同じで、ただ契約の締結を予定していないだけの違いということになります。

ただ②だけは標識の掲示に固有の場所で、これだけは覚える必要がある。「宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地又は建物の所在する場所」です。

要するに「現場」というのか「現地」のことです。

2.業務を行う場所の届出

(1) 届出が必要な場所

次は、標識の掲示の話の続きで、「業務を行う場所の届出」です。これは、案内所等を設けて業務を行うときは、届出をしなさいという規定です。

これは、免許権者や案内所等の所在地を管轄する都道府県知事が、宅地建物取引業者の営業活動を把握して監督できるようにしようという趣旨です。

なお、事務所を設けるときは、免許権者が変わるときは「免許換え」、免許権者が変わらないときは宅地建物取引業者名簿の「変更の届出」が必要になります。

それでは具体的にどのような場所について届出をしないといけないのかというのが問題になります。

先ほどの図は、「標識の掲示」が必要な場所ですが、要するに、表のまん中の縦の列の部分にのみ届出の義務があります。専任の宅地建物取引士の設置義務のある場所です。それだけです。

専任の宅地建物取引士の設置義務のある場所は、契約の締結等が予定されているので監督する必要があるということです。

逆に、契約の締結等が予定されていない案内所等の場合は、契約の締結等は事務所で行われることになるので、事務所を監督しておけば十分だからです。

それともう一つこの業務を行う場所の届出は、案内所を設置した宅地建物取引業者に届出義務があるという点です。

宅地建物取引業者Aが、一団の宅地建物の分譲を行う(つまり、自ら売主)場合に、その販売代理を宅地建物取引業者Bに依頼して、代理業者のBが案内所を設置したとします。この場合には、Bには届出の義務がありますが、Aには届出の義務はありません。Aが案内所を設置しているわけではないからです。

AとBが共同して案内所を設置した場合は、AもBも届出の義務があります。これは試験などで出題されたときは、問題文を読むときに注意して下さい。

この案内所を設置した宅地建物取引業者に義務があるというのは、実は専任の宅地建物取引士の設置も、標識の掲示も同じです。

ただ、注意して欲しいのは、標識の掲示に関して、「宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地又は建物の所在する場所」というのがありましたが、これだけは「売主」である宅地建物取引業者だけに掲示の義務があります。

(2) 手続

それでは、この届出の手続を確認しておきましょう。

宅地建物取引業法の規定と、施行規則の規定をまとめて一つの文章にしますと、「宅地建物取引業者は、その業務を開始する日の10日前までに、専任の宅地建物取引士の設置義務のある場所について所在地、業務内容、業務を行う期間及び専任の宅地建物取引士の氏名を免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事及びその所在地を管轄する都道府県知事に届け出なければならない。」ということになります。

まず、業務開始の10日前までに届出ないといけません。数字も覚えて下さい。

また、「前」というのも気を付けて下さい。

また、専任の宅地建物取引士の氏名も届出が必要ですが、この場所というのは専任の宅地建物取引士の設置義務のある場所でした。

そして、次の届出先は要注意です。「免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事」(つまり免許権者のこと)「及び」「その所在地を管轄する都道府県知事」に届け出ます。

「及び」ですから免許権者と所在地の知事の「両方」に届け出るという点を確実に覚えておいて下さい。 →「又は」「及び」の違い

さらに、国土交通大臣へ届け出るときは、「その届出に係る業務を行う場所の所在地を管轄する都道府県知事を経由しなければならない」という点も何度か問われていますので気を付けて下さい。