宅建業法47条の2(業務に関する禁止事項)
【解説】
1.業務に関する禁止事項~その他
業務に関する禁止事項について、前条の第47条以外のものについて規定しているのが本条です。
ただ、この規定はほとんど常識的なものでそれほど難しいものではありません。
一つずつ見ていきましょう。
2.利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断の提供(第1項)
これは、そんなに難しい話ではありません。「利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断」というのは、簡単に言えば、この不動産を買っておけば将来値上がりして「絶対儲かります」というような場合です。
3.相手方などの威迫(第2項)
これもそれほどコメントすることはありません。お客さんが申込みの撤回等をすると言いだすと、宅地建物取引業者は何とか契約させようとします。しかし、それが相手方等を威迫するなどの方法になると行き過ぎですので、禁止されます。
4.そのほかの禁止事項(第3項)
これは、「前2項に定めるもののほか、宅地建物取引業に係る契約の締結に関する行為又は申込みの撤回若しくは解除の妨げに関する行為」で、国土交通省令・内閣府令で定めるものということになります。
具体的には、宅地建物取引業法施行規則16条の12に規定があり、以下の行為です。これについては、平成23年に法改正がありました。
① 宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をすること。
イ 当該契約の目的物である宅地又は建物の将来の環境又は交通その他の利便について誤解させるべき断定的判断を提供すること。
断定的判断といえば、業法第47条の2第1項に「利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断」というのがありましたが、ここでは「宅地又は建物の将来の環境又は交通その他の利便」についての断定的判断です。
具体的には、「宅地又は建物の将来の環境」とは、「将来南側に5階建て以上の建物が建つ予定は全くない」などであり、「交通の利便」とは、「○○の位置には,国道が2~3年後に必ず開通する」というような場合である。
この断定的判断については、業法47条1号に掲げる重要な事項とは異なり、故意であることは要求していません。
ロ 正当な理由なく、当該契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒むこと。
これは分かりやすいと思いますが、契約の相手方が「契約の締結をするかどうかしばらく考えさせてほしい」と申し出た場合において,事実を歪めて「明日では契約締結はできなくなるので,今日しか待てない」などといって契約を急がせることです。
ハ 当該勧誘に先立つて宅地建物取引業者の商号又は名称及び当該勧誘を行う者の氏名並びに当該契約の締結について勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行うこと。
これは、平成23年法改正で追加されたものです。
ここで勧誘に先立って告げる必要があるのは、「宅地建物取引業者の商号又は名称」、「勧誘を行う者の氏名」、「契約の締結について勧誘をする目的」の3つです。
どれが欠けてもいけません。
この施行規則16条の12の規定は、全体的に常識的なものが多いので、分かりやすいと思いますが、この条文は規定の仕方が具体的なので、宅建試験などを受験する方は気を付けて下さい。
ニ 宅地建物取引業者の相手方等が当該契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続すること。
これはよく、営業マンが一旦断っているのに、しつこく勧誘してくるというのを防ぐためです。
ホ 迷惑を覚えさせるような時間に電話し、又は訪問すること。
これは分かりやすいでしょう。
ヘ 深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させること。
これも分かりやすいと思いますが、「深夜又は長時間の勧誘」以外の方法でも、「私生活又は業務の平穏を害する」ような方法はダメです。
② 宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと。
これは、宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、契約の申込み時に宅地建物取引業者が受領していた申込証拠金その他の預り金について、返還を拒むことを禁止するものです。
たとえば、「預り金は手付となっており,返還できない」というように手付として授受していないのに手付だと主張して返還を拒むことなどである。
預り金は、いかなる理由があっても一旦返還すべきです。
③ 宅地建物取引業者の相手方等が手付を放棄して契約の解除を行うに際し、正当な理由なく、当該契約の解除を拒み、又は妨げること。
これは気を付けて下さい。禁止されているのは、「正当な理由なく解除を拒む等の行為」ですが、これは解除を拒んでも「正当な理由」があれば、許されます。
たとえば、自分が「履行に着手」している場合に、相手方が手付による解除を主張してきたときは、当然解除を拒むことができます。