宅建業法35条の2(供託所等に関する説明)
【解説】
この「供託所等に関する説明」というのは、営業保証金と弁済業務保証金の話です。宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関して取引した者は、営業保証金や弁済業務保証金からその弁済を受けることができました。したがって、宅地建物取引業者と取引する者は、万が一のときは供託所に還付の請求をしなければいけません。そのときのために、当該宅地建物取引業者は、どの供託所に供託をしているのかを説明する必要があるという規定です。
ここのポイントは、説明するのは「宅地建物取引業者」だという点です。この供託所等に関する説明というのは、重要事項の説明に似ています。契約成立前に、供託所等について教えてあげなさい、という規定です。したがって、混乱しやすいんですが、重要事項の説明は「宅地建物取引士」が行わないといけませんでした。しかし、供託所等に関する説明というのは、宅地建物取引士が行う必要はなく、「宅地建物取引業者」が行えばいいことになっています。
実務的には重要事項の説明書の中に供託所のことも記載されていて、宅地建物取引士が重要事項の説明とまとめて行うのが普通ですが、逆に実務で慣れている人には間違いやすいことになります。
次のポイントは、「相手方等」というところです。これは「両当事者」という意味です。重要事項の説明は、買主・借主になろうとする者に対して説明すればよかったわけですが、供託所等に関する説明は両当事者に説明しなければいけません。
もちろん、宅地建物取引業者が自ら売主の場合は、自分で自分に説明しても仕方がないので、買主にだけ説明すればいいわけですが、宅地建物取引業者が媒介業者の場合は、売主・買主の双方に説明する必要があります。これは、買主だけでなく、宅地建物取引業者と取引している以上、売主も宅地建物取引業者に対する債権者になる可能性があり、したがって還付を受ける事態もあり得るからです。
最後のポイントは、「契約が成立するまでの間」ということですが、これは重要事項の説明と同じです。