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宅建業法33条(広告の開始時期の制限)

【解説】

この広告の開始時期の制限は、未完成物件についての規定です。

この条文を分かりやすく書き直すと、「未完成物件は、開発許可や建築確認などの処分があった後でなければ広告できない」となります。

宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前の未完成物件は、これらの開発許可や建築確認が下りなければ、設計変更を余儀なくされます。

そこで、未完成物件については、開発許可や建築確認が下りて、設計通りの土地の造成や建物の建築ができる見込みができて、初めて広告ができますというのが、この広告の開始時期の制限の規定です。

開発許可や建築確認が下りる前に広告をすると、後に設計変更がなされて、広告を見た者が不測の損害を被るおそれがあるというわけです。

そして、これは「広告」の規制ですから、「契約」を締結するのが、建築確認などの処分の後であっても、「広告」段階で建築確認などの処分がなければ、この規定に違反することになります。

この広告を開始するのに必要な「許可等の処分」の典型例は今挙げた開発許可と建築確認です。ただ、広告をするにあたって必要な「許可等の処分」は、実はそれだけではありません。「その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるもの」という表現で分かりますように、開発許可と建築確認以外にも、「~法に基づく~の許可」という形で、宅地建物取引業法施行令で、今私がザッと見ただけで36種類の許可等の処分が記載されています。

したがって、この条文を正確に勉強しようとすると、この36種類くらいある許可等の処分を覚えることになりますが、そんなことは現実的には不可能ですから、上記の開発許可と建築確認という典型例を覚えておいて、その他にもいろいろ必要になる、という感じでいいでしょう。

なお、この広告を行うのに必要な許可・確認等に含まれないものとして、国土利用計画法の届出や、建築基準法の建築協定の認可というのがあります。これらがなくても、広告できるわけです。

国土利用計画法の届出というのは、土地の売買等の契約を行うのに必要なものです。

また、建築協定の認可というのは、建築協定の効力を発生させるものです。

いずれも、土地の造成や建築工事に必要なものではありませんので、設計変更等の問題は生じません。

また、「現在、建築確認申請中である」とか「売買契約は建築確認を受けてからでないと売買契約を締結できません」との記載をしたとしても、この規定に違反します。

確かに、建築確認申請中であるという表示があれば、広告を見た者は、状況は分かるでしょうが、あくまで法は「確認があった後」でないと広告できないと定めています。したがって、確認が下りる前の段階での広告は一律禁止です。

ただ、逆に開発許可等が下りていれば、その造成工事等の検査済証の交付までは要求されていません。

この広告の開始時期の制限は、貸借にも適用がありますので、宅地建物取引業者が家主から代理、媒介の依頼を受けて、建築確認を受けていない建築工事完了前の賃貸マンションの借主を募集する広告はこの規定に違反します。

ただ、この場合でも家主が自ら広告する場合は、この規定に違反しません。

理由は分かりますね?

自ら貸借というのは、宅地建物取引業に該当せず、宅地建物取引業法の規定の適用がないからです。気を付けて下さい。