※この記事は一般的な条文解説で、宅建等の資格試験の範囲を超えた内容も含みます。当サイトの記事が読みやすいと感じた方は、当サイトと資格試験向け教材の関係をご覧下さい。

宅建業法19条の2(登録の移転)

【解説】

1.登録の移転

(1) 趣旨

宅建試験に合格した者は、試験を行った都道府県知事の登録を受けることになります。

したがって、転勤などで、現在試験地から遠く離れた都道府県で宅地建物取引業者に勤務している者などは、現在は登録をしている都道府県からは離れて業務をしていることになります。これは、宅地建物取引士としては何かと不便です。

たとえば、宅地建物取引士証の交付を受けるときには、講習を受講しなければいけません(第22条の2第2項)。このときは、当然登録をしている知事の講習を受けることになるので、勤務先と登録先の都道府県が遠く離れている場合は、受講をするのが不便です。

その他もろもろの手続は、登録している知事で行うことになります。

そこで、このような場合は、宅地建物取引士の便宜のために、登録をしている都道府県知事から、現在業務をしている都道府県知事へ「登録の移転」というのを行うことができます。

この登録の移転は、「登録を受けている者は」という表現から分かりますように、宅地建物取引士だけでなく、宅地建物取引士証の交付を受けていない登録のみを受けている者(宅地建物取引士資格者)もすることができます。

この登録の移転は、いくつかポイントがあります。

(2) 登録できる場合

まず、現在の登録している都道府県から、他の都道府県の事務所で「業務に従事し、又は従事しようとするとき」に登録の移転ができるという点です。

「従事しようとするとき」にも登録の移転ができるので、現在まだ他の都道府県の事務所に勤務している必要はありません。

また、あくまで他の都道府県で「業務に従事」する場合に登録の移転ができるのであって、単なる「住所の変更」では、登録の移転はできません。

これは、試験などではよく出題されます。というのは、この宅地建物取引士の住所の変更というのは、登録の移転はできませんが、変更の登録は必要なので、そのへんが混乱しやすいからだと思われます。気を付けて下さい。

(3) 任意の制度

また、「登録の移転の申請をすることが『できる』」という表現から分かりますように、この登録の移転の制度は、任意の制度で、宅地建物取引士に強制されているわけではありません。

つまり、勤務地が他の都道府県に変更になっても、登録の移転をしたくなければしなくてもかまいません。

というのは、最初に書きましたように、登録の移転の制度は、宅地建物取引士にとって不便だということで、宅地建物取引士の「便宜」のために登録の移転を認めているわけです。

ということは、宅地建物取引士自身がその不便をかえりみず、登録の移転が不要だということであれば、それを宅地建物取引士に強制する必要はないということで、登録の移転の制度は任意とされています。

試験の問題文で、「~登録の移転をしなければならない。」と出たら、「誤り」の肢になります。

(4) 事務の禁止期間中

それと、事務の禁止期間中は登録の移転ができないという点も気を付けて下さい。

2.登録の移転の手続

この登録の移転は、「登録をしている都道府県知事を経由して」申請することになります。

つまり、登録移転申請書は、現在登録している都道府県知事に提出しなければならず、この提出を受けた都道府県知事は、一見書類を登録の移転先の都道府県知事に送付します。

そして、送付を受けた都道府県知事は、それを宅地建物取引士登録簿に登載して、次に申請者及び移転前に登録をしていた都道府県知事に通知します(施行規則14条の6)。