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宅建業法18条(宅地建物取引士の登録)

【解説】

1.宅地建物取引士の登録

宅地建物取引士になろうとすると、まず宅建試験に合格しないといけません。

それでは、宅建試験に合格すればすぐに宅地建物取引士になれるかというとそうではありません。宅地建物取引士として「登録」というのをしないといけません。

それでは、宅地建物取引士の登録をすれば、それで宅地建物取引士なのかというとそうではありません。

「宅地建物取引士証」の交付を受けないといけません。

宅地建物取引士の定義というのは、宅地建物取引業法に条文があります。「宅地建物取引士証の交付を受けた者」というのが宅地建物取引士の定義です。この宅地建物取引士証を交付してもらうためには、試験に合格し、登録をするという手続が必要になるわけです。

試験に合格
  ↓
宅地建物取引士登録
  ↓
宅地建物取引士証の交付

この3段階を経て、はじめて「宅地建物取引士」ということになります。

それでは、なぜこのように3段階にも分かれているのか?

最初の「試験」というのは簡単です。宅地建物取引士としての「知識」を有しているかどうかを見るためです。

最後の「宅地建物取引士証」というのは、運転免許証みたいなもので、宅地建物取引士であることを証明するためです。後に勉強する重要事項の説明は、この宅地建物取引士証を相手方に提示しないといけません。

それでは、試験に合格すれば、すぐに宅地建物取引士証を交付してくれてもよさそうなものですが、なぜ間に「登録」という手続が入っているのでしょうか。

この「登録」という手続は、宅地建物取引士としての適格性をみるためです。つまり、宅地建物取引士としてふさわしいかどうかを判断する手続です。

つまり、宅地建物取引士について一定の資質を確保し、あわせて監督の充実を図ろうとしているわけです。

「試験」では、知識があるかどうかを判断し、「登録」では、宅地建物取引士としての適格性を判断するわけです。

なお、宅建試験は一応各都道府県知事が行うこととなっているので、二以上の都道府県において試験に合格することもできます。

また、登録というのは、宅地建物取引業者の免許と異なり、国土交通大臣の登録というのはなく、都道府県知事ごとになされます。

しかし、2つ以上の都道府県において試験に合格した者は、その試験を行った都道府県知事のうちいずれか1つの都道府県知事の登録のみを受けることができるだけです。

施行規則(登録を受けることのできる都道府県)
第14条 二以上の都道府県において試験に合格した者は、当該試験を行なった都道府県知事のうちいずれか一の都道府県知事の登録のみを受けることができる。

さて、この宅地建物取引士というのは、宅地建物取引業者と似ている部分があります。それゆえに、宅地建物取引業者の話と、宅地建物取引士の話は混乱しやすいということでもあります。つまり、試験などではひっかかりやすいということです。

しかし、逆に宅地建物取引業者と宅地建物取引士の似ている部分と違う部分というのを意識して勉強して、上手に両者の共通点を利用すると、覚えることが減りますし、効率的な勉強ができます。

似て非なる部分というのは、試験によく出題されますので、今言ったような勉強方法が試験に適合しているとも言えます。

話を宅地建物取引士の「登録」に戻しますが、登録は宅地建物取引士の適格性を判断するものだとすれば、この宅地建物取引士の「登録」は、宅地建物取引業者でいえば「免許」に相当します。

そして、宅地建物取引業者には、その適格性を判断するために「免許の基準」というのがあったように、宅地建物取引士にも「登録の基準」というのがあります。この2つは非常に似ているので、違いを押さえていけばいいだけになります。

上図を見て下さい。この表は、宅地建物取引業者の制度が、宅地建物取引士でいえばどの制度に該当するのか示した対応の表です。

これから宅地建物取引士の勉強をする際に、これを参照していただければ、宅地建物取引業者の復習にもなりますし、宅地建物取引士の勉強をする際にもよく頭に入るので一石二鳥です。

2.宅地建物取引士の登録の要件

宅建試験に合格しますと、宅地建物取引士の登録を申請していくことになりますが、登録をしてもらうためには、実務経験というのが要求されます。具体的に言うと、次のいずれかが必要です。

1.2年以上の実務経験
2.国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたもの

1.の実務経験は、「2年」というのは覚えておいて下さい。

なお、この実務の経験の内容としては、顧客との交渉、物件調査、契約書等の作成、代金・手数料等の授受、帳簿の記載等宅地建物の取引に伴う一連の業務が考えられますが、実際に自分がこれに該当するかどうかは、自分で必ず確認するようにして下さい。

2.は「国土交通大臣」というのがポイント。都道府県知事ではありません。

この部分は、宅建試験を受験される方が気になるところだと思います。宅建試験を受験される方の中には、宅地建物取引業者に勤務したことのない人も多いと思います。「私は、宅建試験に合格しても、登録してもらえないの?」と心配になった方もおられるかと思いますが、心配はいりません。

2.というのがあります。これは具体的には登録実務講習のことを指します。みなさんが試験に合格すると、合格証書が郵送されてきます。その中に、この登録実務講習に関する書類と、登録に関する書類が同封されています。実務経験のない方は、この登録実務講習の申込みをして、その講習を修了すれば、「実務の経験を有するものと同等以上の能力を有する」として登録を受けることができます。

このように実務経験のない人は、この登録実務講習を利用するのが一般的ですが、他にも宅地建物取引業法施行規則に「国土交通大臣が実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者」が具体的に規定されていますので、参考までに掲載しておきます。

施行規則(法第18条第1項の国土交通大臣が実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者)
第13条の16 法第十八条第一項の規定により国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めた者は、次のいずれかに該当する者とする。
一 宅地又は建物の取引に関する実務についての講習であって、次条から第十三条の十九までの規定により国土交通大臣の登録を受けたもの(以下「登録実務講習」という。)を修了した者
二 国、地方公共団体又は国若しくは地方公共団体の出資により設立された法人において宅地又は建物の取得又は処分の業務に従事した期間が通算して二年以上である者
三 国土交通大臣が前二号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認めた者

この登録に関しては、もう一つ確認しておいて下さい。登録というのは、「都道府県知事」に申請することになりますが、どの都道府県知事に登録を申請するかというと、「試験を行った都道府県知事の登録」ということになります。

ただ、一旦試験地の知事の登録を受けると、その都道府県に限らず、どの都道府県で宅地建物取引士として事務を行ってもよいし、どの都道府県の宅地建物取引業者の専任の宅地建物取引士になってもかまいません。

3.登録の基準

この登録の基準というのは、宅地建物取引業者の「免許の基準」の宅地建物取引士版です。

したがって、今から登録の基準を列挙していきますが、免許の基準と同じときは、その旨を指摘して軽く流していきます。これが、一番効率がいいんです。それでは、一つずつ説明していきましょう。

(1) 未成年者

いきなり最初から、免許の基準と違うところが出てきました。免許の基準のときは、「未成年者」であるということだけでは、宅地建物取引業者の免許を取得する障害にはならなかったです。

しかし、未成年者というのは、登録の基準にひっかかります。

未成年者といえども、現在は宅建試験の受験資格は緩和されているので、たとえ何歳でも宅建試験自体を受験し、合格するところまでは問題なく進めます。

しかし、「成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」は登録を受けることができません。

したがって、この「成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」の法定代理人が以下の欠格事由に該当しない場合でも、「成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」というだけで登録を受けることができないわけです。宅地建物取引業者のときは、法定代理人が欠格事由に該当しない限り、未成年者でも免許を取得できましたが、そこが異なります。

ただ、婚姻することによって成年とみなされる場合は、問題なく登録できます。

また、未成年者でも登録できないのは、「成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」ですから、「成年者と同一の行為能力を有する未成年者」は登録をすることができます。

前に、宅地建物取引士の設置義務のところで、事務所等には「成年者」である専任の宅地建物取引士を設置しないといけないという話をしました。そして、20歳未満でも婚姻していれば「成年」とみなされるので、成年者である専任の宅地建物取引士になれるということでした。

それでは、20歳未満で婚姻していない場合はどうかというと、「成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」というのは、そもそも登録できないので、当然専任の宅地建物取引士にもなれません。

それでは、「成年者と同一の行為能力を有する未成年者」はどうか。これは登録できます。しかし、「成年者と同一の行為能力を有する未成年者」でも、成年者とみなされるわけではないので、基本的には「成年者」である専任の宅地建物取引士にはなれません。

ところが、宅地建物取引士の設置義務を説明したときに、役員は「成年者である専任の宅地建物取引士」とみなされるという規定がありました。役員というのは、未成年者がなることはできない、という規定はありませんので、未成年者だけれども役員であるという可能性はあるわけです。このような未成年の役員は、「成年者である専任の宅地建物取引士」とみなされます。

(2) 成年被後見人又は被保佐人(第2号)、破産者(第3号)

これも免許の基準と全く同じです。 →第5条1項参照

ただ、注意して下さい。今、勉強しているのは宅地建物取引士の登録の基準です。

したがって、ここで言っているのは、「宅地建物取引業者」(役員含む)として免許を取り消された者は、宅地建物取引業者の免許だけでなく、宅地建物取引士としても登録を受けることができないという意味です。

宅地建物取引業者として免許を取り消されれば、5年間は、宅地建物取引業者も宅地建物取引士もできないということですね。

これは、宅地建物取引士は業者の事務所等で実際に業務を処理する者であり、直接消費者に対応する重要な資格を与えられているので、過去において宅地建物取引業に関し不正行為等を行って免許を取り消された者は、たとえそれが宅地建物取引業者としてのものであったとしても、宅地建物取引士として業務の適正な運営や取引の構成を確保する上からふさわしくないと考えられたからです。

(3) 免許取消

これも免許の基準と全く同じです。 →第5条1項参照

ただ、注意して下さい。今、勉強しているのは宅地建物取引士の登録の基準です。

したがって、ここで言っているのは、「宅地建物取引業者」(役員含む)として免許を取り消された者は、宅地建物取引業者の免許だけでなく、宅地建物取引士としても登録を受けることができないという意味です。

宅地建物取引業者として免許を取り消されれば、5年間は、宅地建物取引業者も宅地建物取引士もできないということですね。

(4) 廃業の届出

これも免許の基準と全く同じ。 →第5条1項参照

注意点としては、第4号と同じで、宅地建物取引業者として免許取消処分の聴聞の公示後、廃業の届出をしたものは、宅地建物取引士としても5年間は登録できないという意味です。

(5) 廃業の届出と役員

これも免許の基準と全く同様。 →第5条1項参照

宅地建物取引業者として免許取消処分の聴聞の公示後、廃業の届出をした場合は、役員も連座して5年間は宅地建物取引士の登録をもらえないという話です。

(6) 刑罰

この刑罰の場合(禁錮以上の刑及び罰金)も、これも免許の基準と同じです。 →第5条1項参照

(7) 登録消除処分

これは、免許の基準と異なりますが、内容的には免許の基準の宅地建物取引士版です。

宅地建物取引業者の場合、「免許取消処分」を受けた場合は、5年間免許をもらえないという話でした。

そして、宅地建物取引業者の「免許取消処分」は、宅地建物取引士では「登録消除処分」に該当しますので、宅地建物取引士も、登録消除処分を受けた場合は、5年間は登録してもらえないというのが、この登録の基準です。

また、この5年間登録がもらえない場合の登録消除処分事由ですが、これも免許の基準の場合の「業務停止処分」を「事務禁止処分」等と読み替えれば終わり、という感じです。ただ、宅地建物取引士は、登録→宅地建物取引士証の交付という流れになりますので、「不正の手段により宅地建物取引士証の交付を受けた」というのが加わるだけです。

ちなみに、以下にその5年間登録がもらえない場合の登録消除処分事由を列挙しておきます。

  • 不正の手段により登録を受けた
  • 不正の手段により宅地建物取引士証の交付を受けた
  • 事務の禁止処分事由に該当し情状が特に重いとき
  • 事務の禁止の処分に違反したとき

(8) 自ら登録消除

これも、登録の基準固有のものですが、内容的には、宅地建物取引業者の免許の基準で、免許取消処分の聴聞の公示前に廃業の届出等を出したものは、届出から5年間は免許を取得できないというのがありましたが、それの宅地建物取引士版です。

つまり、登録消除処分の聴聞の公示前に、自ら登録の消除をした場合は、その登録消除の日から5年間は登録できないということです。

前に説明したと思いますが、宅地建物取引士の登録というのは、放っておけばそのまま一生残り続けます。普通は、それで何の問題もないわけですし、宅地建物取引士の資格が必要でないという方でも、いったん登録して、そのまま放置しているのが普通だと思います。

しかし、宅地建物取引士の登録は不要であるという場合は、自ら申請して登録を消除してもかまいません。自ら申請して登録を消除するのは、宅地建物取引業者でいうといわば廃業のようなものです。

したがって、免許の基準と同様に、自ら登録を消除した日から5年間は登録できないということになります。

(9) 事務禁止期間中

これも登録の基準固有のものです。考え方は非常に常識的なものです。

事務禁止処分というのは、宅地建物取引業者でいうと「業務停止処分」に該当します。宅地建物取引士の「事務」というのは、宅地建物取引士の「仕事」ということで、具体的には重要事項の説明が最も典型的な例になります。

宅地建物取引士が、たとえば6か月の事務禁止処分を受けたとします。そこで、その宅地建物取引士が処分を受けてすぐに自ら登録を消除します。登録が消除されると、宅地建物取引士でなくなるので、宅地建物取引士に対する監督処分である事務禁止処分も解けます。

そして、自ら登録を消除したときに5年間登録を受けることはできないという規定はありませんので、すぐに再度その宅地建物取引士が登録を申請すると、登録できることになります。そして、すぐに宅地建物取引士証の交付を受ければ、宅地建物取引士としての事務を行うことが可能になってしまいます。

これは、変ですよね。もともとこの宅地建物取引士は、6か月は宅地建物取引士としての事務はできなかったはずです。それが、いったん自ら登録を消除することにより、6か月を待たずして宅地建物取引士の事務ができるというのはおかしい。

そこで、こういう場合でも、当初の事務禁止処分の期間である6か月間は宅地建物取引士の登録はできません、というのがこの規定です。

4.宅地建物取引士資格登録簿

この宅地建物取引士資格登録簿ですが、これは宅地建物取引業者では、宅地建物取引業者名簿に該当します。

したがって、宅地建物取引業者名簿と同様に、その記載事項が問題となりますが、これは試験などではやはり変更があった場合について問われるので、変更がありそうなものについて特に覚えておく必要があります。

これも具体的に記載事項を列挙しながら一緒に見ていきましょう。

① 氏名、生年月日、住所

これは、説明するまでもないでしょう。登録簿にこれを記載しないと意味がありません。

ただ、宅地建物取引士の「住所」が入っているということを注意しておいて下さい。また、後に説明が出てくると思います。

② 本籍(日本の国籍を有しない者にあっては、その者の有する国籍)及び性別

この本籍が記載されるというのも覚えておいて下さい。

③ 試験の合格年月日及び合格証書番号

これは軽く見ておく程度でいいでしょう。

④ 実務の経験を有する者である場合においては、申請時現在の当該実務の経験の期間及びその内容並びに従事していた宅地建物取引業者の商号又は名称及び免許証番号

これは登録に実務経験が必要な以上、当然でしょう。

⑤ 実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認められた者である場合においては、当該認定の内容及び年月日

これも前に説明したように、実務経験がない人でも実務講習を受ければ登録できますが、その認定の内容が記載されます。

⑥ 宅地建物取引業者の業務に従事する者にあっては、当該宅地建物取引業者の商号又は名称及び免許証番号

これは、非常に重要な項目です。

宅地建物取引士の登録をするときに、宅地建物取引業者に従事している必要はありません。宅地建物取引業者に従事していない人は、ここは関係ないというのか、何も記載されません。

ただ、宅地建物取引業者に従事している人については、その宅地建物取引業者の商号、名称、免許証番号が必要だというわけです。

勤務している宅地建物取引業者の「免許証番号」が必要となりますので、たとえば、勤務している宅地建物取引業者が免許換えで免許証番号が変更になれば変更の登録をする必要があります。

また、宅地建物取引士が、すでに勤務している宅地建物取引業者の事務所の「専任」の宅地建物取引士になった場合、「事務所ごとに置かれる『専任』の宅地建物取引士の氏名」というのは、宅地建物取引「業者」名簿の登載事項となりますので、宅地建物取引「業者」は、その変更の届出が必要になりますが(法8条)、専任か否かは宅地建物取引士資格登録簿の登載事項ではないので、変更の登録の申請は不要です。