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宅建業法11条(廃業等の届出)

【解説】

1.廃業等の届出

宅地建物取引業者名簿というのを説明しましたが、宅地建物取引業者が廃業等で宅地建物取引業をやめると、当然宅地建物取引業者名簿から削除することになります。

そこで、宅地建物取引業者に廃業等の場合には、それを把握するために届出をしなさい、というのがこの廃業等の届出です。

「宅地建物取引業者が廃業等をした場合は、一定の日から30日以内に、その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。」ということになります。

「30日」というのは覚えて下さい。また、この届出を国土交通大臣へ行う場合には、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を経由します(第78条の3)。

なお、この廃業の届出は免許権者に届け出ればよく、支店等の事務所の所在地を管轄する都道府県知事へ届け出る必要はありません。

それでは、どういう場合に届出をするのか、典型的には「廃業」ですが、それ以外にも届出をしないといけない場合があります。それが第1項1号~5号の規定です。

具体的には個別に各号の解説で述べますが、未成年者である宅建業者が営業の許可を取り消された場合には、免許の欠格事由になるわけではないので、この廃業等の届出をする必要はありません。

ちなみに、この「廃業」(宅地建物取引業法の言葉で言うと「宅地建物取引業の廃止」)というのは、要するにその宅地建物取引業者のすべての事務所を廃止することです。一部の事務所だけ廃止する場合には、この廃業等の届出は不要です。

2.死亡

それでは具体的に、届出が必要な場合を見ていきます。

まず、第1項1号の「死亡」ですが、これは宅地建物取引業者が個人で宅地建物取引業を営んでいた場合です。

宅地建物取引業者は法人の場合と、個人で行う場合がありますので、今後いろいろな説明のところで気を付けて下さい。

法人ではなく、個人で宅地建物取引業者を行っている場合は、「死亡」ということがあります。

そして、個人に対する免許は、その人が死亡すれば効力を失います(一身専属性)。

その相続人が宅地建物取引業を営みたいというのであれば、新たに宅地建物取引業の免許を受ける必要があります。

そこで、届出が必要となるわけです。

この場合には、本人は届出をすることはできませんので、「相続人」が30日以内に免許権者に届け出ることになります。

そして、この「30日」というのは、相続人が死亡の「事実を知った日」から起算します。

この廃業等の届出で、30日の起算日がそれぞれ問題になりますが、「知った日」からというのは、この死亡の場合だけです。つまり、「死亡」の日からではなく、相続人が死亡を「知った日」からということです。

そして、宅地建物取引業者が死亡すれば、宅地建物取引業の免許の効力が失われるわけですが、免許が失効するのは、事実が発生した日、つまり「死亡」のときからです(第2項)。

3.合併

宅地建物取引業の免許は、個人又は法人に専属的に与えられていますので、免許を取得した者が死亡したり、合併で消滅した場合でも、それを承継することは認められていません。

死亡の場合は、本条第1項第1号で規定されていますが、本号は合併の場合の規定です。

法人で宅地建物取引業を行っていた場合、その法人が合併で消滅しますと、免許の効力が失われます。

そして、合併の場合でも、行政上の必要から、法人を代表する役員であった者に届出義務を課しているのが本号です。

この場合、「その法人を代表する役員であった者」が30日以内に免許権者に届け出ることになります。

合併というのは圧倒的に吸収合併というのが多いので、たとえば、A社(消滅会社)がB社(存続会社)に吸収合併される場合、A社はなくなりますので、消滅会社であるA社の役員が届出を行います。

これは、気を付けて下さい。A社が消滅会社で、A社の宅地建物取引業者の免許の効力が失われるので、A社の役員が届出ます。存続会社ではなく、消滅会社の役員が届け出るということです。

次に、届出の期間は、合併で消滅した日から30日以内です。

また、宅地建物取引業者の免許の効力が失われるのも、合併で消滅した日からです。

4.破産

破産というのは、免許の基準のところで勉強しましたが、宅地建物取引業者の欠格事由です。したがって、破産すれば、宅地建物取引業者に届出義務が課せられているわけです。

この場合の届出義務者は、「破産管財人」です。これは要注意です。実は、宅地建物取引士のところでも、この廃業等の届出と似たような話(「死亡等の届出」という。)が出てくるんですが、宅地建物取引士が破産した場合には、「本人」が届け出ることになっています。これとよく混乱します。

これは宅地建物取引業者の場合、破産すると営業保証金の取戻がなされますので、持ち逃げされないように、破産管財人の管理に任せていると考えられます。

次に、届出期間は、「破産の日」から30日以内です。

最後に、免許の失効時期については気を付けて下さい。「死亡」と「合併」のときは、事実が発生した時、つまり「死亡」と「合併」の時だったわけですが、「破産」(以降も同じ)のときは、「破産」の時ではなく、「届出があった時」に免許の効力が失われます。

5.解散

法人が合併・破産以外の理由により解散した場合は、その法人の清算を行うのに、清算人というのが選任されます。これは清算を行っている会社の取締役のようなものです。

この場合、その「清算人」が届出を行います。

また、「解散の日」から起算して30日以内に届出が必要です。

そして、免許の効力が失われるのは、「届出があった時」です。

6.廃業

「宅地建物取引業の廃止」というのが、いわゆる「廃業」のことです。

これは、宅地建物取引業者が個人の場合は「本人」、法人の場合は「法人を代表する役員」が届け出ます。

届出期間は、「廃業」の日から30日以内。

免許の効力が失われるのは、「届出があった時」です。