宅建業法8条(宅地建物取引業者名簿)
【解説】
1.宅地建物取引業者名簿
国土交通大臣又は都道府県知事は、宅地建物取引業者を監督しないといけないので、それぞれ宅地建物取引業者名簿というものを備えます。
この宅地建物取引業者名簿というのは、これからその記載事項というのが重要なわけですが、どうということのない単なる技術的規定のような気がしますが、これが意外に試験で出題されるんです。手を抜かずにしっかり勉強して下さい。
この宅地建物取引業者名簿の記載事項ですが、この範囲は宅建試験でよく出題されますが、そのままストレートに「宅地建物取引業者名簿には、~を記載しなければならない。」という形では、あまり出題されません。
これは記載事項に変更があった場合に、「変更の届出」をしなければならないという形で出題されることが圧倒的に多くなります。
これは、実務的にも重要で、宅地建物取引業者名簿の記載事項の中には、宅地建物取引業者が業務を行っていく中で変更があるような事項が多いんですね。たとえば、役員が変わるとか、専任の宅地建物取引士が変わるということは結構あります。このときに、届出を忘れられては困るわけです。そこで、よく出題されるわけです。
さらに、試験という観点からいうと、この宅地建物取引業者名簿というのは、宅地建物取引士の登録簿と比較してよく出題されますので、混乱しないようにして下さい。
なお、この宅地建物取引業者名簿は、第2項に規定されているように、「国土交通大臣にあってはその免許を受けた宅地建物取引業者」、「都道府県知事にあってはその免許を受けた宅地建物取引業者」だけでなく、「国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内に主たる事務所を有するもの」についても登載しなければいけないことになっています。
つまり、免許権者だけでなく、自己の都道府県内に事務所を有している宅地建物取引業者については、都道府県知事はすべて宅地建物取引業者名簿に登載しなければならない、ということです。
これは、分かるでしょう。宅地建物取引業者と取引をした者などが当該宅地建物取引業者について調べたいときには、自分の都道府県内で調べられないと不便です。
2.宅地建物取引業者名簿の記載事項
それでは、具体的に宅地建物取引業者名簿の記載事項を見ていきましょう。
なお、この宅地建物取引業者名簿の記載事項は、免許証番号および免許年月日を除いてほぼ免許申請書に記載されている事項と同じです。
① 免許証番号及び免許の年月日
これが記載事項になっているのは理解できるでしょう。ちなみに、この事項に変更があっても変更の届出は不要です。免許証番号等は、免許権者において把握できるというのか、免許権者が与えるものだからです。
② 商号又は名称
これは分かりやすいと思います。これも、当然の事項でしょう。
③ 法人である場合においては、その役員の氏名及び政令で定める使用人があるときは、その者の氏名
④ 個人である場合においては、その者の氏名及び政令で定める使用人があるときは、その者の氏名
これは大切です。法人であれ、個人であれ、役員・政令で定める使用人の「氏名」です。
役員等の「住所」までは不要です。
なお、ここの「役員」には、非常勤の役員や監査役も含まれます。
⑤ 事務所の名称及び所在地
これも理解しやすいと思いますが、事務所の「名称」も記載事項ですから、所在地が同じでも、本店が支店に変更になったような場合も、変更の届出が必要になります。
⑥ 事務所ごとに置かれる専任の宅地建物取引士の氏名
この規定のポイントは、専任の宅地建物取引士の「氏名」という点です。
つまり、「住所」は記載事項になっていないので、専任の宅地建物取引士の「住所」が変更になっても、変更の届出をする必要はありません。
また、専任ではない一般の宅地建物取引士の氏名は不要です。
なお、「事務所ごと」に置かれる専任の宅地建物取引士だから、「案内所」に置かれる専任の宅地建物取引士の氏名は記載事項ではないと思われます。
案内所等の専任の宅地建物取引士は、免許権者及び所在地の知事に届出が必要ですから(50条2項)、それによって案内所等の専任の宅地建物取引士については把握するものと思われます。
⑦ 取引一任代理等の認可を受けているときは、その旨及び認可の年月日
この事項については、変更があっても変更の届出は不要です。認可を与えているのは、免許権者だからです。
⑧ 指示処分又は業務停止処分があったときは、その年月日及び内容
この⑧と次の⑨は意外に重要です。この2つはセットとして意識しておいて下さい。つまり、この2つは宅地建物取引業者名簿の記載事項ではあるんですが、変更の届出が不要な項目です。
⑧は要するに宅地建物取引業者が監督処分を受けた場合ということです。これについて、宅地建物取引業者に変更の届出が不要だというのは、宅地建物取引業者が処分を受けたときは、免許権者等が記載するからだと思われます。
また、監督処分の中でも「免許取消処分」というのはありませんが、これは免許が取り消されると宅地建物取引業者名簿から削除されるからです。
⑨ 宅地建物取引業以外の事業を行なっているときは、その事業の種類
宅地建物取引業者は、宅地建物取引業以外に建設業、倉庫業、金融業などを兼業していることもあります。そのような場合に宅地建物取引業以外の事業が記載されるということです。
ただ、これは変更があっても変更の届出をする必要はありません。
変更の届出が不要な理由は、「宅地建物取引業」に関する名簿において、たとえば、建設業などを兼業しているという情報は、それほど重要ではありませんので、免許の更新の際に分かればいいと考えものと思われます(更新申請の際の申請書の記載事項にはなっています。)。
⑩ その他の注意事項
その他の注意事項としては、「資本金の額」というは免許申請書の記載事項ですが(施行規則第1条)、宅地建物取引業者名簿の記載事項ではありません。